「新海誠に惹かれ続けて」君の名は。 ジョン太さんの映画レビュー(感想・評価)
新海誠に惹かれ続けて
新海誠監督作品と言うことでとても期待していたし、実際に観てやっぱりその才能には圧倒されている自分がいた。彼独特の世界観は今作でもしっかりと現れていて、男女2人の距離をじっくりと考えながら直向きに映像化したのだと思う。
だがしかし、やはりストーリーが大衆化され過ぎたと言うか、底へ着いてしまっているような気もある。例えば単純に彼は男女が入れ替わり、その想いが通じ合うようになる物語を描くとしたら。よりいっそうロマンチックでありながら、センチメンタルで、心を抉られるような苦しさを感じさせてくれる作品を作ってくれるはずだ。ただその要素はただ薄く、彗星と言う大事なもう一つの登場人物も活かしきれていないのでは?と、言うもどかしさも物語の視点を変えることで生まれてしまう。ストーリーにやや不満が残ったが、新海誠らしさのような物はしっかり温存されているので目を瞑ることにする。
彼が描く世界はやはり美しく、鳥肌が立つ。その美しさは優しさも、喜びも、恐怖や焦りも、悲しみであっても全てを受け止めて「君の名は。」を輝かせてくれた。「この世界は彼以外の誰に作り出せようか。」と言うしかない。
そして音楽も映画の土台をしっかり支え、今までの作品と比べてのチープさも全くなかった。配役であっても、彼らは声に乗せて全力で切なさや苦しさを伝えてくれた。
「君の名は。」はとても良い映画だった。ただ、新海誠の何かが失われて、それはもう一生戻ってこないのではないのかという不安が少しある。彼の次回作にも期待して待ちたい。
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