「新海ファンとして。」君の名は。 。_ 。さんの映画レビュー(感想・評価)
新海ファンとして。
この感想は過去の新海さんの作品(彼女と彼女の猫〜言の葉の庭まで)を見た私としての私見です。
極力ネタバレをしないように思ったことを徹底的に書きましたが気分害されたり、内容に触れていると感じた方いらっしゃいましたらすみません。
先に謝っておきます。では、感想です。
今までの新海作品からすると、本作は異質でした。
映画の序盤の彗星の描写などは秒速第二話「コスモナウト」の種子島の夜空の描写そのもの。
星を追う子ども、ほしのこえ、秒速5センチメートル、言の葉の庭など今までの新海作品、特に一般に評価されているこれら近年の作品のオマージュが各所に隠れており、見ていてまずその点で楽しめました。
細かな登場人物の心理描写は新海作品にしてはあまり描けていない方ではないかと思いました。
終盤には新海さんらしい一挙手一投足に心情が反映された心理描写が現れているのですがそれまではあまり心理描写は細かいとは言えませんでした。
曲に関してですが、新海作品にしては珍しくオープニングがあり、深夜アニメを見ている気分になりました。映画の本編でも途中で挿入歌が何度か入りますがその点ではせっかく映像に没入していたのに歌に引き戻されるような感じあり、その点はインストロメンタルを持ってきてくれたら良かったなと感じました。
私自身RADWIMPSは好きではあるのですが今までのような山崎まさよしさんや秦基博さんなどのメロウな一単語ごとに意味があるような曲ではなく、かなり疾走感のある曲をテーマに持ってきた点ではあまり好印象を受けませんでした。
大物アーティストではなくとも、監督自信としての看板がありお客さんはついているのですから、無名であってももっと作品とリンクした曲、日本語の素晴らしさにきづけるような今までの新海作品らしい歌を歌える人を起用してくれていたら良かったなと思いました。
ただ、今回のこれはこれで一つの形であるのかなとは思います。
さて、ここまで酷評になってしまいましたが素晴らしかった点です。
まず、画が圧倒的に綺麗です。これは期待通りでした。自然の満載な山や空や都会など、上記にも記載したとおり今までの新海作品での言の葉の庭の都会の自然、ほしのこえの田舎の不思議な風景の混じった自然、秒速の空、電車の外にあふれる風景など本当にそのまま停止させた絵でも見入ってしまうようなカットがたくさんありとても良かったです。
声優も特段不自然な点は感じず、登場人物とマッチしていました。ただ、少し学園モノ系のアニメキャラかな?というような印象を受けた主人公二人のキャラがもっと現実の表と裏を持った少年少女として描いてほしかったかなという感じはあります。
そして、肝心のストーリーですが、ここまでの酷評すべてを覆すほどしっかりと練り上げられ作り込まれていました。
序盤は深夜アニメのような有りがちな予想できる展開、中盤は深海作品らしさが出てきて少しずつ登場人物がどのような人であるかというカット、そして事件、終盤には二人が出会おうとし、そこから
時空、場所、異世界、記憶などのすべての軸を超えて、フィナーレへと向かい進んでいき、次のカットがどうなるのかが予想できなくなり早く次のカットが見たいと思いながら鑑賞し、次第に引き込まれ最後には普段映像作品では全く泣かないのですが思わず泣いてしまいました。本当に度肝を抜かれ、本当に魅力的な作品になっていました。
フィナーレは普段の新海作品だと思っていると少し驚くかもしれません。
ここまで散々酷評を書きましたがそれはストーリーが本当によく、絵、音、全てを通しての完成度としてのハードルを自分の中で上げてしまい「ここをこうしたらもっといいのに」と思ったところを隅々まで上げてしまったからです。
素晴らしい作品でなければこのように酷評したりする気はなかったと思います。
今までの新海作品らしくない、ある種分岐点のような新しい要素を私が受け入れきれてないだけですが万人受けするかどうかと言われれば今までの作品よりこちらのほうが断然受けるのでしょう。
ただ、私は深海作品が好きであり、今までの作品が好きなだけに以上のように感じました。
しかし本当に見ていて興奮し、感動する作品でした。本当に好きな作品となったのは間違いありません。とても面白かったです。
まだ、劇場でしばらくやっているでしょうしあと何度か足を運びたいと思います。