「暴力と意外性を兼ね備えた、ハズレの無い一本」ヘイトフル・エイト temujinさんの映画レビュー(感想・評価)
暴力と意外性を兼ね備えた、ハズレの無い一本
待望のタランティーノ監督第8作で、70mmフィルムで撮影が敢行された事も話題になった本作。
70mmの画面なんて体験したが無かったので、謎の使命感に駆られて劇場へ足を運んだ。
その甲斐あって、自分が今まで観てきたタラさん映画の中でも、一、二を争う充実感だった。
物語は、第一章「レッドロックへの最後の駅馬車」(だったかな? 記憶が曖昧)で幕を開ける。
タラ映画の常連、サミュエル・L・ジャクソン演じる黒人賞金稼ぎのウォーレンと、
駅馬車に乗った、カート・ラッセル演じるこれまた賞金稼ぎのルースとの出会い。
そして馬車には、ジェニファー・ジェイソン・リー演じる1万ドルの賞金が懸けられたドメルグが、
手錠に繋がれて同乗しており、彼女の左目には痛々しいアザが。
タラさんお馴染みのトーク合戦がここでまず繰り広げられるわけだが、
後々伏線として利いてくる「リンカーンの手紙」以外のシーンは少し間延びし過ぎかな、と思った。
でもまぁ、こんなもんだよね。
途中に、ルースとドメルグが理由あってフッ飛ばされるシーンがあるのだが、結構笑えた。
第二章……のタイトルは忘れたが、ここではウォーレン達とウォルトン・ゴギンズ演じるマニックスの出会いが描かれる。
ちなみにマニックスは、この映画の中でも個人的にかなり気に入ってるキャラクター。
ここでも駅馬車内での凸凹トークが思う存分楽しめるが、
ここでの黒人ウォーレンと、元・黒人虐殺略奪団のマニックスとの対立はラストに響くので要CHECKだ。
第三章「ミニーの服飾店」(確実に間違ってます)では、物語が動き出していく。
タイトルの通り、一癖も二癖もあるような8人が、中継地である良い感じの雰囲気なログハウスに集結する。
ちなみに、このログハウスを含めた作品美術を手掛けたのは、日本人の種田陽平。
「キル・ビル」にも参加した人物だが、ウォーレンの赤いタイと裏地の黄色いマントがアクセントになった衣装に、驚異的なセンスを感じた。
タラさんの真骨頂を感じたのは、ウォーレンがブルース・ダーン演じる老いた南軍将軍、スミザーズとやり合うシーン。
よくアメリカ映画を見ていると、相手を挑発したりなんかするのに「オレのアソコを舐めてくれよ」みたいな台詞が飛ぶが、
実際にそれを撮っちゃいました。って感じのシーンだから、是非ともCHECK。
男がフルチン真っ裸になるカットが含まれていて、本作がR18なのは、それも起因しているらしい。
しかし残念なことに、鑑賞前の用事で意外と疲れていた自分は、この第三章で少し意識が遠のいてしまった。
とはいえ非常に大事なシーンが続くので、これから観ようという貴方には十分な休養を取ってからの鑑賞をお勧めする。
一番面白くなってくるのが、第四章「ドメルグには秘密がある」からだ。
ここからの話は何を描いてもネタバレになってしまうので控えたいが、
「パルプ・フィクション」のようなタラ謹製の時間逆行シナリオの妙が光っていたと思う。
ここで初めて、人死にが出るシーンとなるのだが、ここがすごく面白い。
マンガみたいにオッサンが血を吹いて苦悶し、オマケにもういっちょ的な感じで血を吹きまくる。
思わず「フフッ」てなっちゃうんですね。
部位欠損とか、マグナムで顔が吹き飛んだりとかもあるよ!
そして、衝撃の最終章「黒い男と白い天国」。(もしかしたら間に第五章があったかも)
「レザボア・ドッグス」のような駆け引き感が楽しめて、最後は笑えちゃう、タランティーノらしい章。
というか、閉鎖空間を舞台としている時点で「レザボア」っぽいんだけど。
と、ここまで書いてきたが、何故に評価が欠けているかというと、鑑賞中に意識が飛んだから。
可能ならもう一度劇場に行きたいが、そんな金銭的余裕も時間もないので、ソフト化を大人しく待とうと思う。
それでも実質的な評価は文句なしの星5で、満足度もタラ作品史上トップレベルに高い一本。
彼らしい長尺の作品にはなっているが、随所に楽しめるポイントもあり、
なおかつよく練られた意外性のある脚本になっているので、彼の作品の入門編としても最適かもしれない。
アカデミー音楽賞を受賞したエンニオ・モリコーネの楽曲は、マカロニ・ウエスタンの懐かしみを覚える仕上がり。
タラとは相思相愛のタッグ、という事だが、確かにタラのビンテージなオープニング演出などとマッチしていた。