ブルックリンのレビュー・感想・評価
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彼の空、彼女の光
「BOY A」は、私にとって特別な映画だ。忘れ難い、希望と絶望。あの映画を作ったジョン・クローリー監督の新作と知り、これは観逃せないと思った。そして、脚本は、イギリス映画秀作には必ず顔を出す、脚本のニック・ホーンビィ。これはもう…!と、いそいそ劇場へ。
ヒロインが渡米する船のデッキ越しに広がる一面の海と空、恋人とデートする海辺の遊園地、故郷の浜辺…。中でも遊園地は、パステルカラーと楽しげなざわめきに彩られている。希望と幸せに溢れているはずなのに…空が重たい。雲ひとつないものの、どこかくすんで寂しげだ。
新たな世界に飛び込み、人と繋がり距離を縮めることの喜びと恐れ。そして、他者と近づくほどに、埋められらないと痛感させられる孤独感。「BOY A」と共通するものを感じ、すっと引き込まれた。
本作のヒロインは、帰郷により新たな世界から一旦離れ、飛び出したかつての居場所を新たに見つめる機会を持つ。揺れる彼女の選択は…。もどかしくも踏み出せなくなる彼女を後押しするのが、何とあの人物!…という点が、とても効いている。この意外性が、本作の魅力をぐっと押し上げていると感じた。
出逢いとは、つくづく妙なもの。親切で心優しい人以上に、思い出すだけで身の毛がよだつ、忘れられない嫌な出逢いもある。忌み嫌いたいものへの全面対決が、あらたな道への突破口となるのかもしれない。その時は不幸と思えた出来事が、後から思えば、何にも代え難い体験とるのかも…。そんな様々な過去の情景が、とりとめなく頭を駆け巡った。
人生は、不思議に満ちている。ヒロインを包み込む、ラストのあたたかくも力強い光が印象的だ。そういえば、船からの海と空、入国審査所の扉からも、光が差し込んでいた…! 闇あっての光。そんなことも感じた。
人生の初心を思い起こさせてくれる”旅立ちの物語”
誰もが共感できる“旅立ちと新生活の始まり”のストーリーを、俊英監督と女優シアーシャ・ローナンが見事なまでに初々しく、かつヴィヴィッドに描き上げた秀作。透き通ったその瞳で見つめる50年代ニューヨークは、アイルランドの田舎町から来た少女にとってあまりに巨大で、時に押し潰されそうになりながらも、新たな出会いや経験が少しずつ彼女を変えていく。
もちろん、楽しいことの分だけ、辛いこと、悲しいことも多い。だがニック・ホーンビーの脚本は、昨日までの悲しみをセリフ一つでサッと霧消させるユーモアとセンスに満ち、胸の中にいつも一筋の光を差し込ませ続ける。また、ホンビー作品ではお馴染みの“二周目の風景”も登場。人は一周目だと初めてのことだらけで笑っちゃうくらい無様なことも多いが、二周目では視野が広がり、少しだけ遠くまで見渡せるようになっている。その成長ぶり、表情がたまらなく素敵なのだ。人生の折々に見返したくなる。観るたびに初心を思い起こさせてくれる名作である。
主題は「恋」よりも「生きる」こと。
現代の価値観から、主人公に主体性がない、結局は養ってくれる男性を天秤にかけているだけ、といった感想をよく目にした。
本当にそうだろうか。この映画が描いているのはむしろ選択肢が非常に限られていた時代に、ひとりの女性が人生のわずかな可能性を模索する物語ではないか。
日本でも少し前までは、結婚は社会的にも経済的にも「生きる」ためのほぼ唯一の選択肢だったし、それは本作が描くアイルランドでも同じだったろう。
祖国を飛び出した彼女は、新天地アメリカでアイルランド移民のコミュニティに身を寄せる。これも生きていくために当然であり必然の選択だった。そんな彼女がイタリア移民の男性と恋に落ちるのは、国際結婚くらいにハードルが高かったはず。
現代にしてみれば些細なことも、彼女にとっては自分の人生をつかみ取るための必死の決断。やはり自分には、果敢に時代に立ち向かった雄々しいヒロインの映画である。
シアーシャ・ローナンがいい
2023年6月24日
映画 #ブルックリン (2015年)鑑賞
アイルランドの田舎からニューヨークのブルックリンへとやって来た移民少女が新天地と故郷の狭間で揺れ動きながら繰り広げる恋と成長物語
#シアーシャ・ローナン がいい
オシャレな移民物語
上京物語ならぬ移民物語。
アイルランドから、アメリカはニューヨーク、ブルックリンに移民する女性の物語。
主役の女性エイリシュは、オシャレな緑色の服を着てアメリカに降り立ちます、
その後、いろんな色の服を着こなし、アメリカに馴染んでいく…
この映画は、色が特に意味を持っていて、緑色はアイルランドの色だそうです。
劇中いろんな色の服を着こなしていきますが、それがアメリカに馴染んでいく事を表しているんだとか。
ブルックリンは移民が多く、アイルランド系やイタリア系など、いろんな人種が住んでいる町だそうです。
町山智浩さんの解説が素晴らしすぎるので、観賞後ぜひググってみて下さい。
時代設定が1950年代で、とにかくオシャレな感じが終わりまで支配します。
色、髪型、ファッション、車、町並み、など…
移民先のアメリカは、アメリカが1番オシャレでイケてた時代(笑)
移民前のアイルランドも『ベルファスト』で観たレトロな感じ(笑)
オシャレです(笑)
僕の評価は、
3.9ぐらい、80点ぐらい、です。
上京する方や移民する方、新しい環境に身を置かれる方、は特に共感できるはず。
某映画祭では、スタンディング・オベーションも起きたらしい。
いい映画なので、まだ観てない方は、ぜひ!
前半朝ドラ、後半シリアス
田舎から都会に出てきた若い女子が苦労しながらたくましく生きる。前半はマンマ朝ドラですが、後半からシリアスで地味ながらサスペンスな展開になります。
でもアイルリッシュについて歴史的にも一定の印象を持っているアメリカ人なら色々と感じ入るところがあるんでしょうね。他国人にはうかがい知れませんが。
主役が魅力は朝ドラと一緒。詩情あふれて切ない良い映画です、
アイリッシュ(ウー)マン
ブルックリンのプロモーションポスターは煉瓦壁にもたれている画の他に、イースト川とブルックリンの町並みをバックに、ぐっと寄って撮られたSaoirseRonanが遠い目をしている絵面のがある。
吸い込まれそうな青い目、透き通るような白い肌、きりりとした眉、彫像のような鼻梁。眩しいかのように、すこし眉間が険しい。見るからに聡明な顔立ち。表情には、郷愁があり、野望もあり、追慕も見て取れる。そのポスターの顔だけで、映画に確信をもつことができる。つくづく語らずに語ってしまう顔だった。
半ばまで、あんがい障壁のない純愛物語だが、姉が死んで、故郷アイルランドに戻ってきてから、にわかに佳境に入ってくる。
トニーと結婚して単身帰郷したのだが、戻ってみれば、仕事もあるし、好青年のジムにも出会う。打算と女心が、千々に乱れる。しかも、ジム役が定評の好青年DomhnallGleesonなので、見ている方としても、シンパシー逆転してきて、やきもきさせられる。どうすんだよエイリッシュ?
故郷での勤め先だった、日用雑貨店の女主人ケリーは、どうしようもない意地悪婆なのだが、結果的に、惑うエイリッシュを、我に返らせる。善良な人ばかりの映画で、ケリーだけが悪人だが、エイリッシュの人生にとって、彼女が必要悪になっていることが、この映画の構造上のポイントだと思った。
故郷と母を捨てて、ブルックリンへ起つエイリッシュ。
アメリカの建国を支えたアイルランド人。ディズニーもケネディも、多数のハリウッドの映画人たちも、そうやって国を捨ててアメリカに渡ってきたのだろう。スコセッシのアイリッシュマンとて、その裏街道編といえる。
移民には、避けられない取捨選択の決断がある。是も非もない。だから郷愁があり、野望があり、追慕があらわれる──のだろう。本質は、厳しい決別の映画だと思う。
Saoirse Ronanをはじめて見たときから、誰かに似ているような気がしていた。けっして豊満ではないのに、頬のふくよかなカーブが特徴。このブルックリンを見たとき、ようやく、気付いたのだが、この人はなんとなくモナリザに似ている。
なんとなく神秘性もある人だが、打ち解けている態度のインタビュー映像なんか見ると、まったくオープンでフランクな感じのひとである。そのギャップもまた女優らしい。
ラストシーンの服装は、彼女の出自、育って来た背景、経験してきたこと、成長した今の彼女の心、その総てがその服装に一目で表現されていました
素晴らしい映画に出会えた幸せを感じています
大好きな映画のひとつになりました
恋愛物語ではなく、巣立ちと成長がテーマです
恋愛はその過程の話です
田舎、老いた母、体の弱そうな姉、地元の友人達
息の詰まりそうな小さな社会
大きな可能性を求めて、勇気を出してそこから抜け出して、大都会で自分の居場所を作っていく普遍的な物語なんです
アイルランドを出るときやブルックリンについてしばらくは緑色の服を、ヒロインは多く着ています
緑色は聖パトリックの色です
つまりアイルランドを象徴しています
やがてブルックリンに馴染んでくると、緑色の服は少なくなります
トニーと恋仲になると黄色の服が多くなります
黄色はもちろんイタリアを象徴しています
アイルランドに帰ると、緑色が薄いような青色のカーデガンを羽織ったりします
でも中に着ているのは薄い黄色のブラウスだったりします
ブルックリンに帰ってトニーに再会するときに着てきたのは緑色のカーデガン、黄色のブラウス、彼とデートの時に履いていた花柄のスカート
彼女のこれまでの経験をすべて身に纏って、彼に会いに来たのです
彼女の出自、育って来た背景、経験してきたこと、成長した今の彼女の心、その総てがその服装に一目で表現されています
トニーに自分のその人間の成り立ち全てを受け入れて愛して欲しいとその服装が雄弁に語っているのです
大都会NY の片隅
二人の人生はこれから力を合わせて築かれていくのです
新興住宅地のロードアイランドで、二人は彼の兄弟と工務店を開くのでしょう
彼女は経理担当できっと成功していくでしょう
あのこまっしゃくれた男の子みたいな子供をたくさん産んで、いいオカンになっていくんだろうとおもいます
あの生意気な小さい弟は頭は良さそうなので、良い大学をでて家族経営の工務店を大会社にするのかもしれません
それはこれら先の先のこと
新大陸アメリカは移民の国だったことを今さらながら思いだされせてくれます
初めて上京したころの気持ち
初めて恋人ができたころの気持ち
一人の女性の人生を引き受けて家庭を持とうと思った時の気持ち
それらの初々しい気持ちが蘇りました
嗚咽しそうになりました
コロナ禍の中でも新年度は始まり、今年も地方から上京してきた人も多いでしょう
本作のような寮がある会社は少ないと思います
ワンルームの狭い部屋と仕事場との往復だけ
もしかしたらテレワークで部屋すら出ないかも
孤独の中でいるなら田舎にいるのとどこが違うというのでしょう
コロナ禍は残酷です
アカデミー主演女優賞にノミネートされただけあり、シアーシャ・ローナ...
アカデミー主演女優賞にノミネートされただけあり、シアーシャ・ローナンがとてもよかった!
始まりから終わりまで組み立てがとてもうまく(うまく行きすぎな感もあるけど)、移民の国アメリカがどうやってできたのかがちょっとわかる。
移住するときの期待と不安、移住してからのホームシック、そして、新しい国で根をおろし、居場所を作るまで。
何気なく見始めたら止まらなかった。
死ぬほど故郷を恋しくなる。
1950年代。故郷を離れて遠い異国に船で行く事はとても大変な事。ホームシックになり。多くを学びたくさんの事を経験していく。
ブルックリンで結婚しアイルランドで親しき人ができて二人の男性を愛しどうなるのだろう。どちらを選ぶのだろう。と心配しましたが…。
若草物語の主演のシア-シャ.ロ-ナンが魅力的に。表情豊かに演じています。
結局。結婚した彼のところに戻ってブルックリンで幸せに暮らすことを選んだエイリシュ。
女性の揺れ動く心の描写を上手く表現されていて感動しました。姉の死、母との別れに涙しました。素敵な作品です。
外国の恋愛もので、これだけ感動するの初めてです
何より演技が良い、出演者も有名じゃないけど凄く良い。
なにやら不穏な展開になるけど、最後はすっきりハッピーエンド。
いやー、これほど感動するの久しぶり。
何だか、世の中捨てたモンじゃない、人間を信じてみよう、そう思いました、ありがとうございました。
まるで魔法を使わない魔女の宅急便
個人評価:4.2
新しい街で健気に奮闘する姿が、まるで大人版 魔女の宅急便のよう。シアーシャ・ローナンの瑞々しい演技が、眩しいくらいに心に届く。
故郷への懐かしさや寂しさと対比させ、新しい生活と比較する。そして帰郷して初めて自分の本当の気持ちに気付き、故郷を客観的に見つめ直す事ができる。
1人の女性の成長を描きながら、見る側の誰しも当てはまる故郷というテーマを考えさせてくれる。
愛や自身の居場所は、2つを比べ初めて気持ちが浮き彫りになる。
ただ、聡明な主人公も母親に対し不義理を働いている結婚なので、是非とも今後は親孝行してほしい。
カメラアングル
今日の作品は、2015年のアイルランドを舞台にした映画です。
この作品を用いて私が紹介したい映画の要素は、カメラのアングルについて。
まず最初にこの作品でどのシーンがカメラアングルが素晴らしいと感じたかをご紹介しましょう!
ぜひ、作品を見てからもう一回この記事をご覧になってくれたら嬉しいです。
私がもっとも感動したシーンは、後半のアイルランドの地元でのダンスシーン。主人公が御曹司から告白されるシーンなのですが、そのカメラの場所は、あまりダンスシーンでは見られない場所にありました。
ダンスシーンは、基本的に肩なめショット(OTS)を使って、視聴者も一緒にダンスをしているようなショットを使うことが多いですよね。人物はあまり動いてなくて、後ろのバックグランウンドが回転しているようなショットを思い浮かべることができると思います。
しかし、今作の私が取り上げたシーンでは、ダンスシーンなのにも関わらず、カメラは常にダンスをしている二人の横に位置し、二人ともを画面の真ん中で捉えるようなアングルでした。
カメラは常に生きているという表現がありますが、それがこのシーンでよくわかります。
なぜ、OTSにせず、横から引いて撮影したのでしょうか?
おそらくですが、そこには、彼女の感情が大きく関わっていると思います。その時の彼女の感情は、積極的にそのプロポーズを受け入れることはできないが、受け入れた方が母親のためになるかもしれないという、二つの感情に挟まれた状態です。
さらに、ダンスしているときの彼女は、彼を一点に見つめているのですが、一笑も笑いを見せません。
カメラが、二人の交わる視線とは離れれば離れるほど、視聴者はキャラクターの感情から離れていきます。
このシーンでは、キャラクターの感情、つまりダンスしているときにプロポーズして、オーケーするときは、常にハッピーですよね?しかも最上級のハッピー。ディズニー映画でもよく出てくるシーンです。
カメラアングルを使って、そのあるべき感情から視聴者を引き離し、それが彼女の感情を表現することにつながっているのです。
このように、カメラのアングルには、かなり多くの意味があります。これは、視聴者に感じ取ってほしいものではなくて、視聴者が無意識のうちに感じ取ることができるようになっているのです。なので、このように具体的に解釈せずとも、映画の世界に入ることができていれば、それを感じ取ることができているはずです。
他の作品でも、すべての作品でとても大切になってくるのがこのカメラアングルです。これは監督と撮影監督が現場で作り上げていくことで、これを見るとどれだけ監督の才能があるのかが見えてくるものですね。#市民ケーン では#オーソンウェルズ は若干28歳にして、映画の教科書とも呼べるようなカメラアングルのバリエーションとそこに含まれる意味を作り上げました。
なので、映画を見たときに好きなシーンがあれば、そのシーンを覚えておいて、YouTubeでそのシーンを探し(大概ヒットするはず!)、どういうカメラアングルが使われてて、どうやって監督の術中にハマったのか見てみると、もう一度楽しめると思いますよ!
素晴らしい映画
音楽、脚本、演技、照明どれをとっても素晴らしい。
最近の映画によくある、どんでん返したりサスペンスしたりして観客を振り回すような作り方ではない。主人公の心の移り変わりが、無理なく描かれていた。
故郷を出てる人、恋愛している人はさらに物語に引き込まれると思います。
掘り出し物です。
わかりやすく万人受けするであろう良作
こまかく分けてNHKの連ドラにでもできそうな、あるいは「ハイジ」とかあの一連のアニメのような、わかりやすく万人受けするであろう良作。
孤独な環境と意地悪な人たちが結構でてくるので、心優しい彼氏の存在が際立ってくるというコントラスト。
いったん帰国の展開も月9とかでありそうな。
というわけでベタなわけですが、クオリティ高いので文句はなし。映像も美しい。とくに逆光の場面や明るい場所の飛ばし方が絶妙。プロの仕事って感じです。
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