「成長するけど主体なし」ブルックリン kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
成長するけど主体なし
地味な田舎の女の子エイリシュが都会に行って頑張って成長していく姿はとってもグッときました。
ホームシックとか、初めての職場でのぎこちなさとかはあるものの、エイリシュは結構ハイスペで、新生活は順調そのもの。周りの人から例外なく可愛がられるので、多くの人が苦しむ対人関係の悩みも特になく、真面目で頭もいいのか勉強も上手く行く。
エイリシュを後押ししたお姉ちゃんも、「妹はデキるから、NYCでもイケる!」と見立てていたんだろうね。
物語の後半、故郷=ジムか、ブルックリン=トニーかで気持ちが揺れるのは無理もないことだよね。久々に地元に戻ったら仕事面でも頼りにされたり、イケメンが寄って来るなどチヤホヤされちゃって、上京前とは大違い。愛するお姉ちゃんの眠る地だし、お母さん1人になっちゃうし、そりゃー離れがたいよ。
ただ、ブルックリンに戻る選択をするきっかけは今ひとつだなと感じました。決断の要因が外からの働きけで、しかも「〜からの逃避」というのがちょっとね。内なる情熱とか意志の力とかではないし、トニーとの絆の再確認でもないしねぇ。
だが、それこそがエイリシュを象徴しているように思える。エイリシュは根性あるけど主体性はあまりない。これからアイデンティティーを確立していくのだろうが、エイリシュの本質はフワフワした適応マシーンのように思えて、個人的には人としての魅力を感じなかった。このまま主体なく歳を重ねて行くのであれば、エイリシュに暗雲をもたらすだろう。
それから、エイリシュはトニーには恋をして、ジムには好感を持っていたけど、2人とも愛してはいなかったのかもしれない。結婚も押し切られた形だったし。トニーの元に戻るエンディングは一見ハッピーだが、物語のあとすぐに離婚しちゃったりして。まーそれもハッピーエンドかもね。
あと、トニー一家が最高!弟とか、仲良しな雰囲気とか。イタリア系いいですねー!
行きの船に乗り合わせたマドンナみたいな金髪のねーちゃんもカッコ良かった。
トータルではとてもキュートな佳作だと思いました。