「熟年夫婦あるあるネタ満載。」恋妻家宮本 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
熟年夫婦あるあるネタ満載。
『恋妻家宮本』
(あらすじ)
一人息子の正が結婚して、二人っきりになった高校教師:陽平(阿部寛)と美代子(天海祐希)夫婦。実は大学時代にできちゃった結婚したので、二人っきりの生活は五十歳になって初めて。
そんなある日、古い本に挟まっていた美代子がサインした離婚届けを発見する陽平。
結婚生活二十七年。
妻は何に不満があったのか?
ぶるぶる&妻の一挙手一投足にびくびくしながら思いを巡らせる陽平に、複雑な家庭の生徒の問題、料理教室で出会った女性二人の結婚観が交差して、どったばったなコメディです。
原作は重松清せんせの『ファミレス』で、"家政婦のミタ"とか"女王の教室"でお馴染みの人気脚本家である遊川和彦監督・脚本作品です。
本来なら、TVドラマ的な作品を映画館まで……、と思ってしまうのですが、何せ前日に観た「誰のせいでもない」があまりにも気持ち悪かったので。
ベタでもいいさー、ちょっと軽い気分になりたい!と本作を観てまいりました。
人生百年時代突入!とよく聞きます。
最近になって、百年生きるのなら、仕事の仕方も考えないといけないな。
なんて、漠然と思っていました。
子供が巣立ってからの二人だけの人生の方が長いとなると、夫婦関係も色々と考えなくちゃいけないですよね。
息子がいないのに「お父さん」「お母さん」と呼び合うのはおかしい。
名前で呼び合おう!と酔った美代子に迫られ、何か過剰な期待をされているのでは?とびくびくの陽平の姿。
酔った妻の寝顔の染み、皺、白髪を見て、ちょっと引く陽平の姿。
でも、妻の真意を知って、最終的には全てが愛おしく思える。
うーむ、どうなんでしょう?
こんな夫婦はファンタジーだっていう感想も散見されますし、私自身が結婚に向かない性格なので……。
でも、平日の映画館は私よりかなり先輩の熟年カップルor熟年のお友達同士で、時折爆笑が起こるほどでした。
また見終わった後には、「楽しかったね」なんていう声も聞けましたし。
恐らく、熟年夫婦のアルアルに満ちた作品なんだと思います。
劇中、効果的に吉田拓郎さんの曲が使われてました。
わたしは今日まで生きてみました
時にはだれかの力をかりて
時にはだれかにしがみついて
わたしは今日まで生きてみました
そして今
わたしは思っています
明日からもこうして
生きていくだろうと
でも、二人とも五十歳の設定なんですが、私よりかなり先輩達の爆笑を誘っていたりして。感覚が、五十歳よりもうちょっと上かなぁと思いました。
だって私達世代は、第二次バンドブーム到来ですからね。
邦楽ならやっぱ、BOØWYじゃないですか!
ちょっとズレを感じるのは(原作を読んでないので分かりませんが)、少なくとも遊川監督が還暦間近だからでしょうね。
でも優柔不断でファミレスでなかなか注文ができない、自分の意見がなかなかすぱっと言えない、その大きな体からは想像できない恐がりの陽平を、阿部寛さんが好演してました。
そんな夫に、いつもナイスアシストで決断を促すしっかり者の美代子は、天海祐希さんぴったり。
それにしても、でかい二人ですよね!
家の中、棚の上に、更に開き扉のついた棚みたいな(笑)
高くて、普通の人は手が届かない位置にある。
リビング&キッチンが、可愛さと大らか(大ざっぱ)さ絶妙にマッチした、生活感溢れた部屋で、美代子の性格がよく分かる内装になっていました。
優柔不断の陽平ですが、それは相手にとって何が一番良いか考え過ぎるから。
いつも一緒にいる妻だからこそ嫌だと思うこともあれば、他人が嫌だと思うところの本当の良さを分かってあげられる。
夫への、妻への、優しい視線を感じる作品でした。
私も誰かの力を借りて、誰かにしがみついて、一緒に生きていけたらいいなぁ。
できないけど。
最後ちょっと泣けて、ハッピー過ぎるエンドクレジットで盛り上がる。
たまには、こんな作品も良いかも。