「【”百合の葬列。”今作は、20世紀初め英国ロンドンで女性参政権を得るために女性達が苛烈な状況の中、様々な手段を駆使し戦い、大いなる犠牲を払いながら権利を勝ち取る様を描いた社会派作品である。】」未来を花束にして NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”百合の葬列。”今作は、20世紀初め英国ロンドンで女性参政権を得るために女性達が苛烈な状況の中、様々な手段を駆使し戦い、大いなる犠牲を払いながら権利を勝ち取る様を描いた社会派作品である。】
ー 原題は"Suffragette"である。20世紀初頭のイギリスの婦人参政権拡張論者を言う。今作で、メリル・ストリープが演じた実在したエメリン・パンクハースト夫人が代表である。-
■1912年、ロンドン。洗濯工場で働くモード・ワッツ(キャリー・マリガン)は、夫サニー(ベン・ウィショー)と幼い息子ジョージの3人で貧しいながらも幸せに暮らしていた。
ある日、女性参政権運動を展開する薬の調合士イーディス・エリン(ヘレナ・ボナム・カーター)と出会ったことから、下院の公聴会で証言をすることになる。それまで、世の中を知らず、自分の生活はこんなものだと諦観して暮らしていた彼女は、徐々に自分達の権利を主張する事の重要さに気付いて行くが、その代償も大きかった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・イギリス産業革命以降、男性だけではなく子供の労働環境は劣悪であったが、徐々に改善されて来た。最後に残ったのは女性である。
今作でも、モードは夫と同じ洗濯工場で働いているが、男より賃金は安いが労働時間は長い。だが、それを当たり前だと思って暮らして来たのである。
・そんな彼女の前に現れた女性の人権を求めるイーディス・エリンや、彼女達に多大なる影響を与えた実在のエメリン・パンクハースト夫人の語る言葉に、モードは徐々に影響を与えられて行く。そして、長年彼女を酷使して来た工場長から首を言い渡された時に、彼女の怒りは爆発し、工場長の手にアイロンを押し付けるのである。
・今作では、ブレンダン・グリーソン演じるアーサー・スティード警部が、捜査をする一方でモード達女性を気遣う姿が印象的である。良くある当時の女性の権利を阻む公権力=悪という描き方をしていない所が良い。
・だが、少し驚くのは"Suffragette"達を、同じ女性達が遠ざけて観る姿である。関わり合いになりたくないのか、本当に嫌悪しているのか。
・モードも、夫から家から追い出され、ジョージを養子に出されてしまう。
■モードと、エミリー・デイビソン(ナタリー・プレス)が、国王ジョージ5世出席のダービーに行くシーンは、哀しい。エミリーは猛スピードで走って来る国王ジョージ5世の競走馬に”女性に参政権を‼”と書いた旗を持って飛び込み、亡くなってしまうのである。
この事件は、歴史を学んでいれば知っている方も多いであろう。実話である。そして、彼女の死を切っかけに、イギリス内で女性参政権を認める運動が認められて行ったのである。
<今作は、20世紀初め。英国ロンドンで女性参政権を得るために女性達が苛烈な状況の中、戦う姿を描いた社会派作品である。
エンドロールで、世界各国が次々と女性参政権を得た年が流されるが、一番最後の国の年が、ほぼ最近である事にも、色々と考えさせられる作品である。>