「高みを目指す為だけに」疑惑のチャンピオン shironさんの映画レビュー(感想・評価)
高みを目指す為だけに
たとえドキュメンタリーと言えども、映像が編集された時点で、そこにはどうしても作り手の意図が入ってしまう訳で。
ましてや映画はフィクションなのだから、作り手(監督)の意図を自分なりに読み取って楽しむものだと思っています。
ある意味本作は、壮大なネタバレのもと作られている映画なので、
ストーリーを追わなくてよい分、人物の心理に集中できて、ものすごく想像力を掻き立てられます。
とくに記者会見やサイン会の心理描写が見事!
同じドーピング仲間でも、ランスは陰性でフロイドは陽性。(笑)
スポーツの認知度をあげてファン層を広げるには、ヒーローの存在が不可欠でしょうが、
強いだけでなくドラマ性も兼ね備えているランスは、スポーツビジネス的には、これ以上にない優良物件だったのでしょう。
何度となくドーピングが白日の下に明らかになるタイミングがありながらも、組織ぐるみの隠蔽や、大金や圧力をかけた口封じによって、裁判にまでも勝ってしまう。
ヒーローって、多かれ少なかれ人々の欲と幻想で出来上がっていくもんなんだな。
だがしかし、ありがちな
“ヒーローに仕立て上げられて、時代に翻弄された男”や
“こんなこと仕出かしちゃったけど、本当は私達と同じ普通の男”
で終わらないのが、スティーブン・フリアーズ監督!
“純粋に高みを目指す為だけに、全てを利用した男”と読み取らせていただきました。
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