「前向きなテーマを読み解けないのが残念」パラドクス Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
前向きなテーマを読み解けないのが残念
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この手のタイムループやパラレルワールドを扱った作品の肝は、その不条理にどう納得感のあるオチを付けるかに掛かっていると思うけど、その点については、なかなか工夫があって良かったかなと。
確かに初見では意味が分かりにくい部分が多く、特にラスト20分辺りが急展開すぎて説明不足で、せっかくの工夫やテーマ性が伝わりにくい構成になっているのが勿体ない。
特に、何故「35年」がキーワードになっているか考えると、人間が生まれてから青春期を過ごして成人し、子供を産み育てて行くという、人生で最も充実した時間がそれ位で、それ以降は生物的には役目を終えて老いて死んでいくだけの時間であり、その折り返しの時間もそれ位という事なのでしょう、…多分(笑)。
ただ、そうした「人生の時間」に対して教訓的なものを示唆しているようにも思えますが(人生が辛くても逃げずに立ち向かえとか、何となく生活していると年老いてから後悔するよ、みたいな)、しかし作中でいかに精力的に生き延びた若者も脱出時に記憶をリセットされてしまうのではどうしようもなく、「結局、人生なんて何をやっても変わらないし、日常に埋没してただ時を消費して老いていくだけなんだよ」と言う諦観やニヒリズムしか読み取れず、前向きなテーマを読み解けないのが残念です。
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