スポットライト 世紀のスクープのレビュー・感想・評価
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観客もこのスクープの関係者とさせる
自分自身の良心に従い正義を貫く記者達をかっこよく描く。自然な台詞だから、新聞社を描くうえでよくある暑苦しさはなく理知的である。記者の取材対象者の声や表情は忘れられないほど、観客も一取材記者として作品に入り込むことができる。
人は間違いを犯す
何故人は大きい善の前で小さな悪を見逃すのか、きずかないのか。
虐待を調査する過程、関係者たちの痛みが。
そして継続して今も事件は起きているんだと。
幸せの裏、信仰の裏に悪があるときもあって。
難しい。
出演者は皆いい演技だった。
報道した時に責任は誰が取るのか。
しなかった時に責任は誰が取るのか。
虐待をした当事者も虐待を受け、一見それが全然わからない。。。
分厚い調査報道
2002年に「グローブ紙」が連載特集で報道した、カトリック教会の司祭による多数の性的暴行事件。アメリカ国内はもちろん、世界中のカトリック教会で同様の事件が起きており、組織的に隠蔽していた事が、この報道をきっかけに明らかになり、今でも追及されている。そのグローブ紙で調査報道を担当したチームの取材過程を追ったドラマが本作である。
多少、報道に携わっている者として、丁寧で分厚い取材過程が描かれていて、とても面白かった。この事件の根深いところは、映画の中で描かれている通り、カトリック教会だけの問題ではなく、地域全体が、性的虐待行為を見逃し、隠蔽に加担していたところだ。それは、報道機関も同じである。そんな中で調査報道を行なった記者たち、そしてそれを記録に残した本作に、素直に拍手を送りたい。
組織的に、あるいはコミュニティ全体で隠蔽された人権問題を、報道が明らかにして追及する事はとて大事で、報道の重要な役割だ。その事を、改めて社会に投げかけている作品だった。
正義感と信仰の葛藤
神父による児童への性的虐待と、教会による隠蔽。酷い話だと思うが、クリスチャンの人が受けるショックはもっとすごいものだったのだろう。それを暴こうとする記者たちの姿を描いた映画だが、そこに感動するよりも教会と周りの一般市民の反応に驚いた。
有力者の黙殺、教会からの圧力…、キリスト教会が相当な闇を抱えていることがわかる。たぶん現在もどこかで続いている問題なのだろう。
派手さはないが、見ごたえあり。
「報道する側」のモラルが問われるいま、
ジャーナリズムの在り方を描いた良作。
「(この事実を公にして)責任はどうするんだ?」
「記事で伝えなかった場合の責任は誰がとるんだ?」
劇中のこのやりとりが、作品のテーマを端的に表していると思う。
ウェブを通じて、誰でも情報発信できる現代だけど
情報の正確さが担保された媒体は、これからも大切だと思った。
映画館で見られて良かった
アカデミー賞作品賞&脚本賞を受賞した今作は実話を元にしたフィクションで、予告や作品の紹介を見てかなり期待して見たが期待以上に良かった!俳優たちの演技も良かったが、脚本と編集が特に良く、テンポが良くてグイグイ引き込まれていき、あっと言う間にラストを迎えた。確かに派手なシーンはなく楽しい映画ではないが、非常に見ごたえがある良い作品だと思う。特に出来上がった新聞が印刷発行されて世に出ていくシーンは興奮した。だいたい予想通りの展開で、最後まで意外なことは起こらないがそれでも素晴らしい映画だった。ただビデオでもう一度見たいかと言えば答えはNO!これは映画館で見たから良かったのかもしれないのでビデオやテレビでは見たくない。でもまだこの映画を見てない人で社会派ドラマが好きな人にはビデオでも良いから見てほしい。
最後に日本のマスゴミ関係者は偏向報道ばかりしていないで、この映画を見てジャーナリズムとは何かもう一度考え直してほしい。
マーク
大分味気ない。世界中のペドプリーチャーが告発される契機になった記事を書いたボストングローヴの記者達の奮闘っていうことなのだけど、別にただ普通に取材してる話。何か危険な目にあったり、妨害されたり、糾弾されたりとかは大してない。記者達は信仰と職業倫理の板挟みになって苦悩する、とかもない。ペドプリーチャーの犯した犯罪も描かれないから、禍々しさも薄め。まぁ描かなくて良いんだけど、ペド神父さんのコワイ顔写真くらいは見せて欲しかった。敵の顔がはっきりしない。それが実話だからというのは、理由にならなくて、単に脚本と演出の問題。警視庁は桜の代紋背負った金看板やbyまむしのゴロ政的に、カトリックはどデカイ会社で、ゴットファーザー3も敵はバチカンにいたくらいで、ロクなもんじゃなくて、教区っていう仕組みとか、その辺りの構造とかをもうちょっとちゃんと描いて欲しかった。漠然と、枢機卿と、その先にある組織全体が敵って話になってるので、色々ボヤけてて今ひとつ。統計的に神父さんの6%がペドっていう、真偽不明なトンデモ情報あり。
信仰とはなんぞや
同時多発テロと同時期にこんな大きな犯罪が明るみになってたとは知らなかったし、カトリック教会が恐ろしくなった。
記者たちが、見て経験した事しか映像になっていないのでよく映画の題材となってる性犯罪や幼児虐待かと軽く見がちだけど、
強大な権力を持った組織が性犯罪を何十年にも渡り隠してやって来たと、もし現場の記者としてその事を知ったならゾッとすると思う。
実際エンドロールで鳥肌がたった。
アメリカ人の生活に信仰と教会がこんなに根付いてるとは思わなかった。日本の神社仏閣とお坊さんとは意味合いが違うのだな気付くまで、早く訴えれば良いのにと思ってしまった。
性犯罪なんて合う確率低いだろと思いがちだけど、デスクが言うようにそうじゃなくて運が良かっただけという言葉にゾッとした。
正義とは
教会という巨大組織に立ち向かう記者たちの姿は実に勇ましく、感銘を受けた。内容は、神父による子供たちへの性的虐待話と、なかなか衝撃的な話であるが、実際の話であるから、さらに驚きだ。本作では、彼らがどのように真実を突き止め公表するに至ったかが描かれており、真実とは、正義とは何か考えさせられる映画だと思う。
しかし、日本人受けはあまり期待できない作品だ。なんせ話題の中心にある教会は、無宗教の人間が多い日本では馴染みがなく、近所にあったとしても作品に出てくる彼らと私たちとでは、教会に対する存在意義があまりに違いすぎる。
彼らにとって教会や神父は信仰そのものであり、信仰とは人生の中核にあるといっても過言ではない。その中核にあるものたちのあまりに酷な裏切り行為。信仰を持つものだからこその衝撃であり、理解することはできても彼らと同じように感じ取ることは難しい。
終わり方がまた良いですね
『扉をたたく人』ですっかりファンになったトム・マッカーシー監督のアカデミー賞受賞作品ということで観ました。
起きたことを時系列で描きつつも、記者を始めとする関係者の葛藤というか心の動きが丁寧に描写されてるなと感じました。
あとは、何のために記事にするのか、そのためにはいつ、どの程度、取材をしてから公表すべきなのか、という観点を登場人物は非常によく考えていて、本物のジャーナリストだなぁと感じました。
本気で世の中変えてやるという気迫がすごい。
中途半端な情報を敢えて過激にデフォルメして公表するような炎上商法ともとれる一部のメディアやジャーナリストの人達は、この作品を観てどのように感じるのでしょうか?
お前は何をしていたか
重要な問いかけだと思う。今のメディアにも問いかけたい。舛添の政治資金の話も、今回の豊洲の問題もそう。入札してるんだから図面は入手のしようがあったはずで、役人の広報不足はさておき、お前らは何してたんだ。ロクに調査して報道することもなく、無知にあぐらをかいて、居直った正義感面を急にし始める。この映画は第四権力に痛烈な警鐘を与える。
よく描かれるような過剰な抵抗運動や英雄的な台詞回しはない。過度な表現を削ぎ落とし、1つ1つが積み重なって、大きな結果に達する様を描く。バットマンもハルクも演技が素晴らしい。
実話で淡々と進んで行くのでなかなか理解し辛い場面もあったけど見終わ...
実話で淡々と進んで行くのでなかなか理解し辛い場面もあったけど見終わるとなるほどと理解できた。神父の幼児性愛が現象だとすると恐ろしいな〜。マイケル キートンかっこ良かった★
淡々さがリアル
公開されてからずっと観たかった、
アカデミー賞作品賞受賞作。
事件の真相を、淡々と突き詰めていくスポットライトのチーム4人と、その上司。
最後、新聞が印刷されて、世に出されていくところは、ゾクゾクした。
クリスマスに子供たちが教会で聖歌を歌う姿と、
神父が起こした性的虐待という闇。
その対比が何とも言えない。。
映画全体を通した、この淡々さがよかった。
それにしてもこの作品、映画館で観たかった。。
絶対的権力の暗い道に差し込んだ一筋の伝える力
本年度アカデミー賞作品賞受賞作。
カトリック教会の神父たちが約30年以上にも渡って幼児たちに性的虐待をしていた事実を伝えたボストンの地方記者たちの実話に基づく社会派ドラマ。
非常に良かった!
賞を獲ったからじゃなく、小さな存在が絶対的権力に立ち向かう。
その事実に衝撃し、その記者魂に心震える。
地味だとかあちこちで言われてるけど、記者たちが真相に迫っていく様はスリリング、性的虐待をした統計上の神父の人数にはショッキング!
確かに派手ではないが、淡々と丁寧な語り口がこの作品に合っている。
トム・マッカーシーの丹念な演出とオスカーに輝いた緻密なオリジナル脚本の賜物。
ワクワクするようなエンターテイメントもいいが、じっくり見入るのもまた映画の醍醐味。
幼稚園の頃近くに教会があり、カトリック的なミサや懺悔をかじった事はあるが、それがどんなに人の心に根差すものか、幼児だったからか理解出来ぬまま。(幼稚園児のくせに、週何回かのお祈りが面倒臭いとませた記憶しか残ってない)
ましてや信仰心が薄いと言われる日本人にはピンと来ないかもしれない。
しかし、こう考えてみるとどうだろう。
尊敬し、信頼し、心酔してた人から受けた“いたずら”。
信仰という神父と信者の特別な関係、教会という絶対的善と思われている神聖な場。
それに覆い隠れ繰り返された、人の道からも神の道からも外れるおぞましい行為…。
酷い言い方かもしれないが、性的被害者たちはちょっとまともな精神状態じゃない。
でもそれは、心に深い傷痕を残され、狂わせられたからだ。
勿論、教会や神父の全てがそうではない。ほとんどが崇高な場であり、敬愛に値する人たちだろう。
教会や神父に限った事じゃない。ほんの一部…。
権力や絶対的立場を利用した偽善者どもが必ず居る。
教会や神父の悪事を一方的に訴えたものではなく、記者たちに焦点を絞ったのがいい。
彼らのやってる事は、被害者にまた悪夢を思い出させ、傷口を広げているだけかもしれない。
何年も前に投稿の訴えがあったのにも関わらず、その時は気にも留めなかった事実もある。
黙認したという意味では彼らもまた同じ…。
新局長の言葉が響いた。
我々は暗い道を歩いている。今、一筋の光が差した。
調子のいい偽善と思われても仕方ない。
でも、誰かがやらねば。
ここは我々の町。我々の手で真相を!
彼らが掴み取った真相は、“スクープ”とか“暴露”とか“一大スキャンダル”とか下世話なマスコミ言葉じゃない。
ただひたすらの“伝える正義”。
演者全員に賞を与えたい!
熱血記者マーク・ラファロはさすがの巧演。デスクと対立するあるシーンの台詞には胸を打たれた。
かつての鬼の記者で現名デスク、マイケル・キートンのカッコよさにしびれた。(キートンの最近の快進撃は嬉しい限り!)
ただ紅一点の華を添える存在だけじゃない、熱演披露のレイチェル・マクアダムス。
物静かだが口火を切ってくれた局長リーヴ・シュレイバー、最初は非協力的だが本当は熱意ある弁護士スタンリー・トゥッチ…メインから脇まで全員が名演!
実力派たちのアンサンブルも、映画鑑賞最高の旨味の一つ。
(緑の巨人に旧蝙蝠男に鋼鉄爪のあんちゃん…キャストにアメコミ関係者が多いが、これは別の言い方をすればアメコミ映画が実力派を起用している事になる)
ジャーナリストとマスコミでは似てるようで正しくはまるで違う。
ジャーナリスト→記者、マスコミ→媒体。
でも、“何かを伝える”という意味ではそう変わりはない。
どうもマスコミは、“マスゴミ”なんてディスり言葉があるくらいイメージが悪い。
確かに、下らないゴシップを漁るばかり。
人の愚行を伝えるだけが仕事じゃない。
見習えとも言わない。
その誇り高き“伝える力”を間違えるな。忘れるな。
有力候補の一つだったが、受賞はサプライズと言われた。
大方の予想は「レヴェナント」、もしくは「マッドマックス」の受賞を望んだろうが、結果的に本作が作品賞を受賞して良かったと思う。
モラルや倫理のみならず
性犯罪や児童虐待だけでは済まされない、風土が包含する精神性を加味しなければ本質に迫ることが難しい主題なのでは。
それらを腹落ちさせる為には、随所に聞こえるスクリプトを見逃さない必要があるように思える。
職場の、とりわけ上司の異動に伴うヒエラルキーやイデオロギーの軋轢が執拗に描かれなかったのは私的に◎。
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