「土曜日の朝っぱらから深く深く考えさせられた」スポットライト 世紀のスクープ chibirockさんの映画レビュー(感想・評価)
土曜日の朝っぱらから深く深く考えさせられた
カトリック教会の話なぞ、無宗派の日本人に受け入れられるのかという
不安は無用、立派なエンターテインメントに仕上げられており、
置いてきぼり感は全くありません。
とはいえ、上手い役者と秀逸な脚本のおかげか胸に迫る重厚感、緊迫感あり、
非常にバランス良く作られています。
そもそも、人間がよりよく生きるために生まれたのが宗教なのに、
膨れ上がってしまった組織は権力、金、人間の欲望でいかようにも
利用できる。そしてこれほどの大国で、その事実がまかり通っていると
いうことがまずショック。
自分が絶対だと信じていた人間に辱められた被害者は勿論、
教会を拠り所としていた信者たちは、生きていく指針を失ったも同然。
気持ちのを支えていた支柱を木っ端微塵に破壊された彼らの心は
一体これから何を信じればよいのだろう?
罪人達はロクに罰を受けることもなく、新天地にてまた涼しい顔をして
同じ悪行を繰り返す。
本来ならば悩める人間を導くために存在する人間が、道徳心のかけらもない
行為を繰り返して多くの人間の人生をぶち壊し、その事実は無きものにされる…。
カトリック教会の犯した罪の重さは計り知れないし、今でもどこかで続いているかもしれない。
世界各地で混沌となっているこの世の中、人間は宗教や民族で
カテゴリ分けされてレッテルを貼られてバッシングされて攻撃される。
この連鎖の頂点にあるともいえるカトリック教会の白人教職者達の
悪行、このタイミングにてこの映画が公開されたことは、
アメリカ、カトリック信者以外の世界中の人間にいろんな意味での
大きな影響を及ぼすと思われます。
また全く異なる視点からの感想ですが、スポットライトチームの仕事。
自分がこれまで仕事に必死になったことがないため、大切な物を
犠牲にして仕事に身を投じる彼らにこころ動かされてしまったらしく、
これまでの「お金がもらえればいい」という信念が曲がりそうです。
ともすれば自身や家族の身に危険が及ぶような際どいネタに、
心身すり減らし尽力する彼らを突き動かすものって一体何なんだろう?
決して楽ではない仕事ですが、ここまで追い求められるものが
あるということが羨ましく感じました。
朝イチの回で観ましたが、おかげで久しぶりに人生の深い部分について
1日考えさせられました。
本当に秀逸なエンターテインメント。