「あと20年でも待つから原作版の映像化を」BLAME! 熊楠さんの映画レビュー(感想・評価)
あと20年でも待つから原作版の映像化を
学生の頃に原作ブラムを読んで衝撃を受けた人間のいち感想です。
映画ブラム。
映像や音響はとても素晴らしかったです。感覚したことのない空間認識には皮膚がびりびりしました。制作側の熱量を強く感じました。
ですが入門編として作られた映画ブラムは脚本がわかりやすくなった分、原作ブラム独特の特色が薄まり、自らかっこいいSFアクションアニメ映画の既定枠におさまってしまった印象。
原作の漫画の枠をはみ出てしまう異質さは殺がれ、キャラも今時に美形化され混沌とした世界で滅亡しようとしている人類を救うといった内容で悪くいえば普通になってしまったように感じます。
原作ブラムのストーリーは説明やセリフが少なくても多様な視覚言語からの読解がなされれば充分意味や意義がある内容だと思います。
想像の余白の大きさ、わからなさの不気味さと楽しさ、人間ドラマだけに依存せずに独立する世界観、まるで主役みたいに匂い立つような巨大建築群達。霧亥の気が遠くなるような長い長い孤独。
確かに原作が時間内におさまらず、難解と言われる内容の為、映画版が多くの人の為に作られた作品と頭ではわかっていても、誰よりも待ち続けたいちファンとしてはドモチェフスキー、イコ、シーラカンス、キレると恐い顔のメンサーヴ、口の悪い珪素生物、建築を食う謎の生物、計測する珪素生物、統治局とダフィネ・ル・リンベガ、巨大建設者、レベル9シボと建設者に会いたい。あの巨大な建築群の中をただ黙ってネットスフィアを探して歩き回りたい。荘重たる空間で思いきり呼吸したい。
今の娯楽のためでなく今までのアニメ作品の枠組みや約束事をぶち破って、表現の拡張、感覚域の拡張、何がしかの既存の価値観をひっくり返して、映像作品として未来に残ってほしい物語だと考えています。
無責任かもしれませんが、もし誰かにこの言葉が届くのであれば何年でも待つので原作ブラムの映像化がされることを祈っています。