「エイリアンよりも恐ろしいアンドロイドって、テーマが違くね?」エイリアン コヴェナント まっとん姉さんさんの映画レビュー(感想・評価)
エイリアンよりも恐ろしいアンドロイドって、テーマが違くね?
この映画の粗、つっこみどころについては先輩レビュアーの皆さまがあれやこれや指摘されていて、いちいち「その通り!」と感心させられる。
映画自体は前作「プロメテウス」の消化不良気味のラストを含めていろいろなアンサーを提示してくれて楽しめる部分は多いと思う。エイリアン・シリーズのファンとして見て良かったと思える作品である。
だがしかし。本来の主役であるモンスター、エイリアンを、人類が造ったアンドロイドが進化・改良させて人類の脅威となる殺人兵器としてブラッシュアップ。挙句の果てに、宇宙船の乗組員をだまくらかしてその胚芽を地球(もしくは地球からの移民先の新たな惑星)へ持ち込もうと目論む。その目的は明示されないものの、これまで示されてきたエイリアンのスペックを鑑みれば人類の皆殺しさえ予測可能である。
たしかにエイリアン第1作目からして宇宙船に同乗したアンドロイドが身近な人間に仇をなす性質の禍々しい知能を持つという設定ではあったが、本作のデヴィッドはもはや「サイコパス」ともいうべき異常性格に達している。同様なアンドロイドが地球上に複数存在すれば、外部からエイリアンを持ち込まずとも「ターミネーター」で描かれたような機械=アンドロイドが人類を殺戮し権力を握ることは不可能ではないと想像できる。
そうであれば、この映画はエイリアンというモンスターがもはや不要となる方向へ一歩踏み出したと言わざるを得ない。しかし、機械の反乱というテーマは「2001年宇宙の旅」以来手垢にまみれたテーマであり、新鮮味は感じられない。
本作はひょっとすると続編として「地球に持ち込まれたエイリアンと人類の闘い」を想定した前日譚を意図していたのかもしれないが、私としては映画の主題があらぬ方向へ脱線して幕が下りたとの印象が拭えず、残念極まりない。