「完成度の高いガッカリした作品」エイリアン コヴェナント ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
完成度の高いガッカリした作品
「エイリアン2」で生き残った少女が、「エイリアン3」で死んでしまったことが分かりがっかりしたが、今回も前作「プロメテウス」で生き残ったショウ博士が、結局、死んでしまったことが分かり、再びがっかりした。彼女は、創造主の惑星へ飛び立って行ったはずですごく続編に期待していたので、その反動でこの結果には大いに失望した。もう少し映画ファンのことを考えて続編を作って欲しい。
また、前作では人間を助けたアンドロイドのデイビッドがこの映画では悪者になってしまう展開も、映画ファンへの裏切りに近い。ただ、前作で、彼がエイリアンの卵のようなものを飲み物に入れるシーンがあったが、もしかしたらこの映画の伏線だったのか?
前作では、主人公が大バトルののち結局生き延びて、ほっとしたものだったが、今回は非常に後味の悪いエンディングだ。
もちろん、並の監督じゃないので、パニック映画、ホラー映画のツボをよく心得ているのも事実。エイリアンに感染した2人が、1人は宇宙船の中に隔離されたが結局火災で宇宙船と共に燃えてしまう、と同時にもう1人の感染者も体内からエイリアンが出てきて壮絶なバトルとなるが、この同時進行で起こるパニックの演出は見事である。1作目の「ミッションインポッシブル」の冒頭のシーンをなぜか思い出した。
全体を通しても、さすがリドリースコットと思わせる素晴らしい造形美(未知の惑星、宇宙船、未来の武器や色々な装置等)や最後の宇宙船にしがみついているエイリアンとの死闘等を堪能できたのに、肝心のストーリーが、アンドロイドの暴走というのが主題になってしまい、いままでのシリーズとズレが生じて非常に違和感を持った。
また突っ込みどころも多い。未知の惑星に降りるにしてはクルーが無防備すぎる。前作でデイビッドは短髪だったのに長髪になっている、なんでアンドロイドなのに髪の毛が伸びるんだ。周りにエイリアンがいるかもしれないのに、隊員の女性がたった一人で顔を洗いに出かけたり等。
いずれにしても最後の展開は納得できない。冒頭、アンドロイドとアンドロイドを作った「父」との対話で、アンドロイドが、では「父」はだれが作ったのですか?と質問する。アンドロイドが新しい惑星の創造主になるということを暗示したのか?最初と最後に流れるワーグナーの「ヴァルハラ城への神々の入城」は何かを象徴しているのか?
変な言い方をすれば、非常に完成度の高い「ガッカリした」作品であった。