「色々残念」エイリアン コヴェナント moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)
色々残念
リドリー・スコットが「人類の起源」や「ヨーロッパの神話」、「神殺し」のテーマに興味があるのはわかった。もともとのエイリアンがそもそも2001年的なルックだったし、そういう作家性が彼にあるのはよくわかる。嫌いじゃない。っていうかそういうヨーロッパ美術のダークな退廃した感じは自分の好みですよ。はい。
ただ、もうそれを「エイリアン」でやらなくて良くない?多分探せば、この映画に関して「このシーンは○○の作品から引用されてる!」みたいな文章がわんさかネットで見つかるんだろうけども、この作品に関してはさ、「そもそも話が面白くない」で、良くない?引用が多くて深読みが楽しいっていうのは、作品が面白くてこそでしょ?
確かに「プロメテウス」ほどグダグダではないにしろ、搭乗員の殺され方から最後のエイリアンの退治方法まで、既視感が・・。殆どのアイデアに全く驚きがない・・。本当に焼き直し以外の何物でもない・・。
多分、リドリースコットはエイリアンシリーズを面白くすることには最早興味がなくて、彼が語りたいテーマを彼の一番お金が使えるヒットシリーズに入れ込むことに熱心なわけでしょ?もうそれなら小品で自分のやりたいことを思う存分やってくれよっていう・・。
あともう一つ大事な事。「時系列順に全てを語る」というのが、今のハリウッド大作の風潮としてある。スターウォーズにしろ、猿の惑星にしろ「語られていなかった物語を最初から語る」っていうやつ。それがそもそも間違ってるんじゃ・・。
スターウォーズのエピソード4とか、最初から語ると面白くないから一番面白いところから話を始めたわけでしょ?だから・・最初の話が面白くなるわけない笑
例えば、当のリドリースコットのブレードランナーだって「どういう事がその前にあったか」を最初に文章で簡単に説明してから始まるけど、別にそれで問題ない。くどくど、見せる必要なんてないんですよ。
それに、その時系列の使い方っていうのも監督や編集、あるいは脚本の「腕」の見せ所なわけで・・。どういう順番で話をするかっていうのも映画にとってすごく大事な要素だよね?
例えば「パルプフィクション」や「ゴッドファーザーpart2」を「時系列」で見せたら傑作になるかっていうと、ならないわけだし。。
前プロメテウスの批評を書いた時にも書いたけど、「何があったか」を全て描いてしまうっていうのは観客のイマジネーションを奪う行為でもある。エイリアンや巨人やあの宇宙船が一体何なのか・・それがわからない事が観客の想像力を掻き立てていたのに・・。
そういう意味でも「プロメテウス」と「コヴナント」は「蛇足」以外の何物でもない。