劇場公開日 2016年3月26日

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「竜宮城からの手土産は悪いものではなかった」リップヴァンウィンクルの花嫁 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0竜宮城からの手土産は悪いものではなかった

2016年9月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

幸せ

萌える

日本の長編劇映画としては12年振りとなる(海外作品やドキュメンタリーやアニメを除く)岩井俊二監督作。
…まず、誰もが気になるこのタイトル。
誘われて森の奥で酒盛りをして、酔っ払って寝て起きたら、周りが20年も経っていた…というアメリカ版浦島太郎のような小説の主人公の名。
タイトルの意味は最後には分かるけど直接的と言うより間接的、20年が時も経つファンタジーでも無いけど、何とも不思議な魅力を持った作品。
岩井作品最長の3時間だが、岩井作品を嗜んだ方なら分かる通り、透明感ある映像美とそれにマッチしたクラシック音楽に彩られ、長尺を全く飽きさせない。

本作はもうとにかく、
黒木華ファン、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!
学校の先生、ウェディングドレス、若奥さん、メイド服、笑って、子供のように泣きじゃくって…3時間たっぷり黒木華を堪能。
最近何だかちらほらネット上でアンチ派が増えてるみたいだけど(二階堂ふみもだけど)、ナチュラルな魅力がやっぱり可愛らしいんだな。

話は…
気弱な派遣教員の七海はSNSで知り合った男とそのまま結婚。
結婚式に出席する親族が少なく、何でも屋の安室に代理出席サービスを頼んだ事から…!

岩井監督にはSっ気があるのかと思うくらい、前半はヒロインに降りかかる不幸、不幸、不幸、転落の数々。
生徒にからかわれ…
職を転々…
新婚早々夫に浮気され…
夫の浮気相手の男から関係を迫られ…
姑からキツく当たられ…
住む家も無くし…
ドロドロはしてないけど、薄幸のヒロイン物語。

七海が“平凡な人生”を踏み外す事となったのは言うまでもなく、明らかに胡散臭そうな何でも屋の安室。
世の中、こんな仕事あるんだぁ…と思いながら、その世渡り上手さに感心と言うか呆然とさせられる。
綾野剛が飄々と好演。
この男との出会いはヒロインにとって幸か不幸か。
七海の結婚生活破綻は一応あの人という事になってるけど…。
しかし、七海の“平凡な人生”を大きく変えたのも事実。

安室から紹介された奇妙なバイト。
自分も利用した代理出席サービス、月給100万の住み込みのメイド。
そして、かけがえのない友との出会い。
自由奔放、天真爛漫、その一方人知れず心に闇を抱え…真白を演じたシンガーソングライターのCoccoが圧倒的な印象を残す。

SNSが効果的に使われ、現代社会ならではの繋がり。
某名作アニメや某名作小説好きならニヤリとさせられる遊び心たっぷりのネーミング。
とある業界の事も描かれ、あの人のキャスティングなんて、これはリアルかドキュメンタリーか!?(笑)
(坂○安○は見ておいた方がいいかも?)

心地よさ、陶酔、残酷さ、痛々しさ…。
我々にとっては3時間、ヒロインにとっては奇妙な経験、“不思議な竜宮城”から帰ったヒロインに何か清々しいものを感じさせた。

近大