「監督の私生活への想いも含め」人生は小説よりも奇なり seegenさんの映画レビュー(感想・評価)
監督の私生活への想いも含め
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39年続いていた事実婚のままならば幸せに続いていたであろう生活が、同性婚という社会への表明によって見えない圧に負け、崩れていく。
近親者の優しささえも、悪意はないのに針の筵のように居心地が悪くやり切れない。そんな日常を映画的な美しさの映像と音楽で淡々と描く。
甥がゲイっぽいと揶揄するボブの画のシーンが字幕ではニュアンスを訳し切れず残念。別の意味の「陽気、バカバカしい」の取り繕いのために語彙が替えられないが、アメリカでゲイは差別用語。日本語でいう侮蔑的な「ホモ」に近い。
ジェネレーションの中で移りゆく意識の代表である甥が世間の空気としての差別意識を氷解させ人間的に叔父を悼むようになるラストへのグラデーションは小さい前進でも大きな希望だ。老ボブの時代がゲイに酒を出さない差別運動の時代から、今は少数でも理解者もいて、未来へも繋がっていく。
同性婚が決して安住の地ではなく根元では変わらず生きにくい世と描きつつ、根源的な愛の素晴らしさ奇妙さを原題「LOVE OF STRANGE」のままに映し取った佳作。
監督の私生活でのパートナーであるアーティストが手がけたボブの劇中画。ただならぬ存在感で、実物を見てみたい気持ちにさせられた。
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