劇場公開日 2017年4月21日

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「ミュージカル・ビデオ・アワード」美女と野獣 TOYさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ミュージカル・ビデオ・アワード

2017年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作は可もあり、不可もありという感想です。

まずは残念だったところ。なによりもベルです。バラを盗もうとしてしまった父はビーストの与えた罰に服することに従うのに、その代わりと名乗り出たベルは好きあらば逃げ出そうとする。しかもビーストに文句ばかり。与えられたのは冷たい牢獄ではなく、立派な客室に温かいスープであるにもかかわらず。もし、これで強きに屈しない自立した女性像を描いているというならば辟易します。
ビーストの顔も整形イケメンのような違和感がつよく、私は受け入れられませんでした。眉毛、口元、白目を含む目の大きさ、色。ビーストをホワイトウォッシュ(ヒューマンウォッシュ?)する必要があったのでしょうか。
また、従者に黒人が多く見られたのも違和感があります。物語の時代背景や立地という世界観に邪魔しているように思います。強引にうそぶいた平等は人権問題の解決方法としても悪手だと感じます。

しかし、主人公に思い入れを持てなかった私でも素晴らしいと思うビジュアルワークとミュージカルシーンでした。どれも尺は長く感じましたが、昨今のミュージカルブームの中、今作は映画自体のコンセプトを「最高峰のミュージカル・ビデオ集」としたのではと思う程です。
そのコアになっているのが、サウンド・オブ・ミュージックを彷彿とさせるようなアナログ的な演出が随所に見られた点です。当然、最新CGを駆使して幻想的なビジュアルに仕上げていますが、冒頭にベルが町中で歌うシーンなどは、やはり、一人一人の表情や人間味といった演者の魅力、カメラワークの見事さ、音楽の力強さなど、全て、人の熱量に由来してあの素敵なシーンが生み出されたと感じます。

時代は変わり、ビジュアルが綺麗になることで細部に渡って力強く何かを伝えることはできるようになりましたが、結局は人の魅力が詰まっていないと面白いものはできないのだなと思わされた映画でした。

TOY