「モーグリの闇落ちをきちんと描くべき」ジャングル・ブック SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
モーグリの闇落ちをきちんと描くべき
ストーリーは分かりやすく王道。
本当にひねりがなくて、一昔前のディズニーみたい。
ひねりはなくていいんだけど、物足りなさはかなりある。
3回くらい、眠気に耐えられず、頭ががくんがくんなってしまった。
もしかしたら吹き替えで鑑賞したのが良くなかったのかも。吹き替えでミュージカルを聞くと、どうしてもワンランク質が低下したような気がしてしまう。
最後の方の展開はかなり不満。
火を使うのが最大の禁忌とされていたはずなのに、それを使うにあたりあるはずの葛藤や、使ってしまった経緯の説明があまりになさすぎる。
トラを倒すためにどうしても火を使わねばならない理由がない。どうやって使うつもりだったのかもない。
また、火を使ったモーグリに対する仲間の反応もおかしい。
火を持ってきたモーグリは、彼らにとっては「闇落ち」した悪魔の子であって、トラの言うことが真実であった証明でもある。
実際、森を火事にしたことはトラを倒す倒さない以前にとんでもない大災害のはずで、大勢の動物たちが焼け死んだはずだ。
なぜそれが責められない?
このへんの、「闇落ち」したモーグリ、自分のしでかしたことに激しく後悔するモーグリ、森の大災害、モーグリを非難するかつての仲間、といったものがきちんと描かれて、その苦難を乗り越えた上でトラとの対決があれば、まだ面白かったと思う。
こういったストーリーにするためには、トラは単なる悪役ではなく、人間の残酷さをよく理解した、オオカミとは対極にある正義を代表するやくどころである必要があるだろう。
モーグリは、自分自身の行動を通して、トラの言っていたことが正しいということを理解し、それに苦しまねばならなかった。そして、トラを倒すには、それを乗り越えて、トラの正義を超えた自分自身の正義を見つけねばならなかったはずだ。
この世界観は、モーグリという、動物と人間の中間にいる存在を通して、動物の素晴らしさ、人間の素晴らしさ、どうお互いに共存していけるか、などを描くことのできる、面白いものだと思うのだけど、残念ながらこの映画では、単なる勧善懲悪の単純な話になってしまっていると思う。