「MCU phase3」シビル・ウォー キャプテン・アメリカ こっこさんの映画レビュー(感想・評価)
MCU phase3
本作品で遂に幕を開けたMCUのフェーズ3。
フェーズ1、2のスタートはいずれもアイアンマン。
マーベルスタジオの杮落とし作品だった上に、しっかりと成功を収めたことから大切にされているといったところでしょうか。今回も幕開けにしっかりと出演しています。
1作目のキャプテンアメリカは、面白いというよりは、コミック作品の映画という枠を超えきれなかった印象が強かったのですが、ルッソ兄弟へと監督をバトンタッチしたウインターソルジャーから、しっかりと映画作品としてのリアリティや独立した存在感を放ちはじめ、それに伴ってキャプテンアメリカに対する人気も高くなったように感じます。
その功績からルッソ兄弟続投となった本作品は、キャプテンアメリカの3作目でありながら、シビルウォーというタイトルが大きく打ち出されています。
もともとケビンファイギがコミコンにて、今後のMCU作品の全体像を明らかにした際、キャプテンアメリカの3作目はサーペントソサエティというサブタイトルが付いていました。
これは、コミック作品で実在するストーリーなのですが、蛇系のヴィランが集まったチームの名称です。
もちろん、大した人気もなく、ただただやられるだけという場つなぎ的な存在のヴィランチームでした。
なのでキャプテンファンにとっては、シリーズ3作目にして何故そんなつまらない敵と戦わなければならないのかと疑問に感じていました。
これに関しては、敢えてマイナーなコミック作品からサブタイトルを引っ張っておいて、実際にはシビルウォーでしたー!というサプライズから情報拡散を爆発させたいというマーベルのマーケティングだという見方もありますが、コミコンというとても大きなイベントに於いて、サーペントソサエティと打つよりも、シビルウォーとした方が確実に期待感を煽りますし、爆発的な情報拡散もあったとおもいます。
僕的には、アベンジャーズエイジオブウルトロンの脚本にあったキャプテンと社長の対立から、そこを拡大させることに向かってシビルウォーに行き着いたか、シビルウォーというコンセプトありきでウルトロンにそのような脚本を滑り込ませたかのどちらかだと考える方が自然かと思いました。
いずれにせよシビルウォーという人気コンテンツを使ったのは大成功でした。
原作のシビルウォーは、マーベルのあらゆるキャラクターが大混戦する作品です。
それこそスパイディだけでなく、F4、Xメン、アイアンフィストなどなどが、スーパーヒューマン登録法の下に揺れ動き、たくさんの犠牲者もでたり、引退するものも出たりします。
なのでコミック作品を知るものにとって、このメンツでシビルウォーと言われても、スケール感の小ささを否めずにはいれませんでした。
しかし結論から言うと対立の深さと、しっかり練りこまれた根拠によって、本作品におけるシビルウォーは、しっかりとシビルウォーとして成立していました。
自ら巻き起こしたウルトロンに胸を痛め管理下に入ることを選んだ社長と、正義を貫くために個人を選んだキャプテン。
アベンジャーズのトップ2に入った亀裂が、アベンジャーズ自体を内側から音を立てて引き裂いていく様をまざまざと見せつけられます。
このずしりと重たく、冷たいシビルウォーに少しの安らぎと温かさを与えてくれたのが、ヒーローたちの空港でのバトルです。
社長がスパイディをスカウトするところもそうですが、ピーターの初々しさ、戸惑うアベンジャーズメンバーたちの表情や言葉、さらにはアントマンの巨大化であるジャイアントマンの登場といった先のMCU作品の告知をも絡めたステージがあったからこそ映画の楽しさを残すことができました。そういう意味でもファンにとって、ヒーロー同志の戦いは、胸が踊るものに仕上がっていました。
アントマンがジャイアントマンになるのも、元々の原作の設定にあるものです。がっかりしたという方もおられますが、アントマンが映画になった時点でいずれジャイアントマンが登場することにはなっていたのです。悪しからず。
コミック作品のシビルウォーではたくさんの犠牲者もでます。死んでしまうヒーローも少なからず存在します。
本作では、キャプテンチームのメンバーのホークアイ、スカーレットウィッチ、ファルコン、アントマンが国連管理下の牢獄に収監され、アイアンマンチームではウォーマシーンが下半身麻痺という重大なダメージを背負い、シビルウォーの犠牲者となりました。シビルウォーの結果として彼らも重いダメージをしっかり背負わせたのもルッソ兄弟のいい仕事の一つと言えるでしょう。
何と言っても圧巻なのがラストのキャプテンとウインターソルジャー、そしてアイアンマンの血みどろの戦い。切なくそして胸がつまるシーンです。
バロンジモは、この結末を狙い、過去にウインターソルジャーが、社長の両親を殺害した映像を探し続けていました。映像を手に入れ、まんまとシベリアにキャプテンとウインターソルジャー、アイアンマンを呼びつけることに成功したジモは、隠しておかなければならなかった事実を、映像で社長に見せつけます。
この事実を既に知っていたキャプテンへの怒りと、ウインターソルジャーという愛する者を奪った相手に対して怒りで我を失った社長が激突するという流れです。
戦いのラストでは、本当にキャプテンがアイアンマンを殺してしまうのではないかと、本当に心からキャプテンを恐ろしく感じてしまうほどの迫真の演技を見ることができます。
マスクを外し血だらけになった社長の顔とキャプテンの正気を失った目は見る者を圧倒してくれるでしょう。これは映画でなければ味わえないシビルウォーです。
社長の死は想定外でしたが、本作でキャプテンが死ぬという噂がありました。
コミック作品では、シビルウォーの後にデスオブキャプテンアメリカという作品が出ています。シビルウォーで巻き起こった被害に胸を痛めたキャプテンが、制度に抗うことを止め、当局に投降を決めた後からのストーリーです。
この作品は、投獄されるため移送途中のキャプテンが射殺されるところから始まり、親友のウインターソルジャーがキャプテンアメリカを受け継ぐというのが大まかなストーリーなのですが、何を隠そうこのキャプテンを殺したのがシャロンカーターなのです。
本作中盤で、エージェント13がシャロンカーターであることを公表するシーンがあります。この時点でファンとしてはドキドキものです。しかもウインターソルジャーがバッキーとしての意識を取り戻しているのですから、もうキャプテンの死は避けられないものだと確信してしまうわけです。でも本作では、死ななかった。本当によかった。
コミック作品のシビルウォーの中にあるように、レジスタンスとして地下に潜ることになります。
次の登場はインフィニティウォーのパート1、パート2のどちらかになりますが、社長がキャプテンに助けを求め、再びアベンジャーズが一つになることを願うばかりです。
MCUはこの後、ドクターストレンジ、ガーディアンズオブザギャラクシー2、スパイダーマンと続きます。
本作のおまけ映像は、ジモの収監後の不敵な笑みが見られます。ジモはコミック作品では、紫のマスクが接着剤によって取れなくなったヒドラの化学者というヴィランです。
今は素顔ですが、ジモである限り何らかの展開を感じさせてくれます。
そして、もう一つがスパイダーマンが帰ってくるという映像。最後は社長が作ったガジェットからツムツム仕様のスパイディのアイコンが天井に映し出されます。ディズニー作品であることを一般観衆にもアピールしていると思われます。
気になるスパイディ新作ですが、本作でスパイダースーツを社長が手がけたので、単独映画にも社長が関わることになるかとおもわれます。シビルウォーでの合流までを描く可能性もありそうですね。
今後スパイダーマン単独作品も複数続くことが考えられると、期待してしまうのがアイアンスパイダーマンの登場。ワカンダで採れるヴィブラニウムで作られたスパイダースーツで、カラーはアイアンマンカラーというもの。そこまではやらないのかなぁ、いやいやディズニーのグッズ展開を考えたらありえそうです。
さぁ、ますます加速していくMCUの世界。
本作がその期待を現実のものとしてくれました。
劇場でぜひご覧ください!