「批評家が誉めないからこそ面白い」タイム・トゥ・ラン 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
批評家が誉めないからこそ面白い
もともとは Bus 657 というタイトルだったのが
Heist(強盗)と改題され、
邦題はタイム・トゥ・ラン。
ややこしい。
(ちなみに本編では「Bus 657」と表示される)
Wikiを見たら、製作費推定2,200万ドルなのに
興行収入250万ドルとか書いてある。
え?
Box Office Mojo を見ると、
アメリカでは2週間限定上映で興収5万ドル。
ええっ? 爆死なの?
調べてみたら、
2014年10月の撮影が終わるか終わらないかのとき既に
アメリカン・フィルム・マーケット(AFM、映画の見本市)で
世界のバイヤー相手にに売り出したんだそうな。
買ったバイヤーは自分の国で、ロードショーするもよし、円盤で売るもよし、
オンデマンドで配信するもよし、ということらしい。
そういうわけだから、決して
「つまらなくって爆死した」
というわけではないらしい。
* * *
閑話休題。
面白かったんですな、これが。
自分の「帝国」であるカジノを守るために独裁・恐怖政治をしき
「ポープ(教皇)」と呼ばれるのがロバート・デ・ニーロ。
昔はその片腕だったディーラーのヴォーンがジェフリー・ディーン・モーガン。
そのヴォーン、小さな娘が小児癌で、手術を受けないと死ぬしかないのに、保険がきかず費用が払えない。
ポープに30万ドル貸してくれと頼み込むが、すげなく断られ、
あまつさえ解雇される。
数か月前に入社したばかりのコックス(デイヴ・バウティスタ)に強盗を持ちかけられ、
一度は断ったヴォーンだが、事ここに至ってはもはや話に乗るしかない。
だが、コックスの連れてきた2人の仲間はどうにも頼りないし、
コックスもなんだかすぐキレるやばそうな奴。
さあどうする。
原題の原題「Bus 657」のとおり
バスジャックしたバスの中と外の展開が中心。
これ以上語ると楽しみがなくなるので、
なかみの話はこの辺で。
* * *
Rotten Tomatoes で批評家が23%だってんだけど、
読んでみると大概
「ストーリーが新しくない。以前の×××と同じ。だったら×××を観た方がいい」
てな調子の、それこそ新しさ皆無でよく見かける批評を書いてる。
ストーリーなんて、ほとんど出尽くしてるでしょ。
それでもキャラが変わってディテールが違えば、全然違う話になるんであって。
そもそも人間のやること考えることなんて、何千年も何万年も
同じことの繰り返しなんだから。
それでも1人ひとりが違うからこそドラマになるんだから。
違うものばかり求めてると、逆に全然面白くないことが往々にしてある。
だから批評家が誉めてナンチャラ賞かなんかとっちゃう映画は、
むしろつまらないことが多い。
この映画も、
批評家が誉めないからこそ面白い
のであります♪