「映画ならではの味わい」カルメンという名の女 雨音さんの映画レビュー(感想・評価)
映画ならではの味わい
一つ一つのシーンが、上等で珍しい料理を摘み食いさせてもらっているような味わいで、興味深くて最後まで目が離せない。美しい絵画とか、ユニークな風刺画とか、はっとするようなショート動画、個性的なものが映し出されている写真、それらをまとめて連続でみているかのような贅沢さ。
そこに音、音楽まで加わって。
映画ならではの味わい。
とりわけカルメンがすてきだった。
ストーリーはあるけれど、それ自体はどうとういうことはないとおもう。
さらに、ひとつひとつの場面は、常識的に考えればおかしく感じるものが多く、これらが皮肉なのか冗談なのか、現実なのか作りごとなのか、境界線も曖昧になってきた。
でも、そんな中でも、人間らしい<本物のもの>がテーマとしてはある。ごちゃごちゃな世界だからこそ逆にそれが美しいものとして効果的に浮かび上がってくる。
こっち側とあっち側・・・それらを繋ぎとめようとするが、それはとても細く弱く力不足だった。そして、ストーリーはあっけなく終わってしまう。
現実離れした表現がされているようにみえて、でもよく考えてみれば、私たちが生きている世界はこんな混沌とした変なもので、か弱いものなのかもしれない、と視点を変えさせられる。
そして人間らしい何か掴んでいる、何かできていると思いこんでいたくても、実は相当、非力なのかもしれない、と。
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