「誰かの善意が 誰かに不幸を呼び寄せる」マジカル・ガール みじんコさんの映画レビュー(感想・評価)
誰かの善意が 誰かに不幸を呼び寄せる
12歳の少女アリシアは、幼くして白血病を患っている。余命いくばくもない彼女の願いは、大好きな日本のアニメ「魔法少女ユキコ」のコスチュームを着て踊ること。
愛する娘の最後の願い。父ルイスは失業中の身にもかかわらず、娘のために高額なコスチュームを手に入れようと奮闘するが…
……と、ここまでのあらすじを読んでこの映画に興味を持った人は
ここから先の感想を読まずにとにかくこの映画を観て欲しい!
予備知識無しに見た方が絶対に面白い種類の映画だと思いますので^^
……というわけで、ここからは映画を見た人に向けての感想。
この作品、最初は『マジカルガール』というタイトルからはとても連想できない、ダークでブラックなノワール映画やん!と感じたのですが、よくよく思い返すとこの作品はアニメ『魔法少女まどかマギカ』と同じテーマを描いてますよね…
それはつまり
誰かの苦しみが 誰かの喜びに変わるがごとく
誰かの善意が 誰かに不幸を呼び寄せる。
というお話…。
『魔法少女まどかマギカ』で他人の幸せを祈ったが為にその魂を魔女と化した魔法少女達と同じく
『マジカルガール』の登場人物達も
娘アリシアの望みを叶えようとした父ルイス…
夫との家庭を守ろうとしたバルバラ…
バルバラの屈辱を晴らそうと義憤に駆られたダミアン…
彼らは純然たる『善意』によって行動した筈でした、しかしその望みを叶える為に彼らは大きな代償を払わされます。
物語のラスト、アリシアは身にまとったドレスを手にいれる為にバルバラが払った代償のおぞましさを知りません。
しかしダミアンによってその対価を支払わされる理不尽…
彼女は最初からそのような望みを抱かなければ良かったのでしょうか?
ダミアンに向けられた、アリシアの全てを語ったような強い強い眼差しの美しさ…
あの時、父親が立ち止まりアリシアが投稿したラジオの放送を聴いていれさえいれば…
運命の円環構造に組み込まれた人間達の悲劇をしみじみと味わえる、異色のスペイン映画です。
面白かった!