「ゆるりと過ぎる素敵な時間。」森山中教習所 ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
ゆるりと過ぎる素敵な時間。
国際便の飛行機の中で冒頭約15分くらい観て引き込まれ、この度DVDにて鑑賞。
いや期待以上に面白かった。
だらっとゆるっとオチなく終わるかと思いきや、ちゃんとストーリーがあったし、セリフは多くないけどその分登場人物の表情や風景で観る側に感じとらせて、また観客が想像できるような「間」が十分とられてた。
非公認の自動車教習所を舞台に、高校の元クラスメートだった大学生のキヨタカとヤクザになったトドロキが一緒にひと夏を過ごす物語。
このキヨタカとトドロキの関係がまたすごく良い。
高校時代はトドロキが退学する日、一言二言言葉を交わし、1冊の本を共有しただけの二人。
教習所で再会して一緒に過ごす時間ができても多くは語り合わない。お互いの連絡先すら知らない。サキさんには「あんたたち友だちなんでしょ?」と呆れられる始末。
でも確かにふとした瞬間に交わした言葉に影響され合って繋がっている。たぶん、やはり、ちゃんと「友だち」なのだ。
この二人の対比も切なくて良い。
免許が取れたらキヨタカは町を出て遠くへ行く。トドロキはその土地に根を張ってずっと仕事に生きることを余儀なくされる。
車に乗れるようになる意味は二人にとって全く違っているところが切ない。
卒業する日、もう「自分たちの人生は交わらない」と態度で示すトドロキに対し「またな、トドロキ」と言うキヨタカがすごく良い。高校の時ヤクザになるためにトドロキが学校を去る時にかけた言葉と同じ。
またそのうちすぐ会えるかのように。
ここは胸熱だった。
ラストは町を出たキヨタカが戻ってきて
「トドロキ、どうしてるかな」と思い出し、トドロキは仕事しながらキヨタカが書いたエッセーをちゃんと読んでる。
そして車に乗った二人が踏切ですれ違う。お互い気づいているけど、何もせず前だけを見て。
切ないけど二人の関係はこれからも交わらない、でも共有したものはずっと消えない。それを感じさせた良いラストだった。
キヨタカを好きな女の子、松田さんの存在がまたすごく良いよね。
それに思い返すとこの作品に私を引き込んだのは冒頭の松田さんのシーンだったなあ。