「アズミハルコの行方不明は解放の手段である。」アズミ・ハルコは行方不明 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
アズミハルコの行方不明は解放の手段である。
ミサンドリーに振れすぎやしないか、という危惧を感じないこともないですが、
抑圧要因は一回ぶっ壊さないと、先に進めないからさ、先ずは怒っていいんだと思います。
なのでJKギャングはすっごくスカッとしました。
抑圧を否定していいこともわからないほどに、女は見えない鎖につながれているんですよ。だから、怒っていいってことをまずは知ってほしい。
鮮やかなとび蹴りなんかに、もっとやれ、もっとやれ、と思いました。
社長に専務にユキオにマナブにソガに、ハルコの父親。
どいつもこいつもゲスばっか。マナブはまだゲスが表にあまり見えなかったから、
ちょっとかわいそうだけど、でもユキオのアイナ評を反論しないという
無言の肯定をしていたし。20歳よりJKがいい、ってことも反論しなかったし。
女は若くてかわいいことだけに価値があるという文化の中で、
JKは性の対象としての、女の一番いい時期の象徴です。
そんなJKがゲス男に消費させられず、逆にゲス男をぶっ潰すのは、本当に快感ですわ。
残念なのは、この映画は女たちがみて、熱狂してしかるべきなんだけど、
現実を生きるのハルコやアイナやハルコの母は、この映画に辿り着かないという現実です。
多くの彼女らが繋がれている地方都市では、この映画、かからないんだよ。物理的に見られないのね。
そして映画を観る程度の可処分所得もなかったりするんです。それが女の現実です。
そして、この映画、ちょっと難しいんです。
その上、一番つらいのはさ、現実の女たちは、JKギャングに共感するのは、まだ無理だとおもう。
そう思えるのは、怒っていいってわかってる人だから。
その程度まで、自尊心を養えてこそできる事だから。
怒っていいかもわからないんだよ。
社長や専務の言い分が正しいって思わされていてさ、それに反抗もできない。そして彼らの価値観で生きていることに疑問を持っていないから、苦しみの出所がわからず、自分より劣っている(と信じたい)人に苦しみを転嫁している。痛みは受けているから、自分より弱い、自分の子や娘や友達やゲーノーカイのうわさとかにさ、仕返しをしてるのさ。わけもわからずに。
地方都市で生きる女の閉塞感は、私の苦しみでもあります。
今は政令指定都市に逃げ込んではいますが、
あのままふるさととの関わりを続けていたらとおもうとぞっとします。
アイナやハルコやハルコの母は、自業自得だとも思います。
もっと前に生き方を自力で変える手段はあったはずです。
でも、そんな事に気づかないくらい、選択肢が見えないように、
立ち止まって思考させないように、問答無用のレールが敷かれているんです。
それを振りきって自由に生きろということなんです。
だから、アズミハルコは行方不明を自ら選んだわけです。ハルコとアイナの夜の邂逅がとてもよかったです。アイナに届いていてほしい。
すっごくよかったけども、もちょっと難しくない語り口で多くの女たちに届けて欲しかったので、星4つです。