「ダークミステリーの力作」クリムゾン・ピーク R41さんの映画レビュー(感想・評価)
ダークミステリーの力作
現代に入るころの時代、人々の中には幽霊を信じるものも数多くいる。
主人公のイーディスは幽霊をモチーフにした小説を執筆する旧家のお嬢様。
彼女の父のもとには資産家や有識者などが集い、いくつもの事業を考案し実行していた。
そこに融資を求め、トーマスがやってくる。そしてイーディスと出会うことになる。
今回のターゲットが決定した瞬間だ。
この時代背景と彼女の小説、そして彼女の霊体験という設定がこの作品の下地となり不気味さと同時に想像上のリアリティを高めている。
トーマスには姉のルシールがいて、パーティでピアノ演奏するのだが、彼女は胸に含みを持っており、何を考えているのかわからない。
この怪しげな姉弟の目的はお金で、そのためには何でもする、してきた。
イーディスは騙され、父が殺害され、アメリカからイングランドへ移住、弁護士を使い彼女の財産をすべて手に入れる最終段階になった。
お茶に毒を盛られ始め、一日に何度もお茶の時間がある。
姉弟の本拠地であるイングランドの古い城は、この物語がおどろおどろしいものであることを伝えているが、イーディスが見る幽霊によって、これがホラーなのかミステリーなのか拡販される。そしてルシールが纏うイーディスへの微妙な態度が気味が悪い。
子供がこの作品を見るとホラーになるのだろう。しかし彼女に見える幽霊は、彼女に起きた出来事を伝えている。
おそらく、姉弟の父による暴力と、二人のゆがんだ関係がこの城で起きた一連の事件を引き起こしていったのだろう。
そうしてこの姉弟は散財しながら次々と結婚してはその家族を殺し財産を手に入れながら、はるばるアメリカまで来たのだ。
彼ら姉弟の動機の設定は完ぺきだ。おどろおどろしく吐き気がする。
そしてミステリー要素もたっぷりとある。
視聴者は、イーディスの父が何者かによって殺されたことを知っているが、姉弟のどっちかまではわからない。
彼らの目的が財産だということを理解しつつ、彼女が婚約者トーマスとともにイングランドまで行ってこの先どうなるのか心配になる。
城にいた彼の姉ルシールの冷遇が、この姉弟に隠された影を演出する。
特に郵便局への帰りに帰れず宿泊したことで、ルシールの異常さが明確になる。
この作品の型そのものは古くからあるグリム童話などのものと同じだ。
しかし幽霊や事件や彼らの過去までたくさんの要素が入り混じることで、作品の重厚さが増している。
また、伏線の張り方が明確で、少しずつ真相の輪郭が見えてくるという表現方法は、見るものを飽きさせない。
最後にイーディスがルシールにスコップで一撃を加えるが、彼女は再び襲ってくることがない。
これは、彼女がトーマスを刺殺したとき、彼女自身が本当は何が大切だったのかわかったからだろう。
それでもルシールはしつこくイーディスを追いかけ対峙するが、心の中では「殺してほしい」と願っていたと想像した。
姉弟が両親を殺したきっかけが今一つよくわからなかったが、ここがもっと明確になればいいと思った。