劇場公開日 2016年1月8日

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「ギレルモ・デル・トロ風ゴシック横溝ミステリー!」クリムゾン・ピーク 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ギレルモ・デル・トロ風ゴシック横溝ミステリー!

2016年6月4日
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鑑賞方法:DVD/BD

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ギレルモ・デル・トロが手掛けるゴシック・ミステリー!
もう、ただただそれだけで見たかった。
ところが、全米では興行・批評共にパッとせず、日本でも話題になる事無くひっそり公開、ちっとも怖くないとの声もちらほら。
それもその筈、そもそもホラーというホラーではないし、別にこの作品に怖さは求めていなかった。
「パンズ・ラビリンス」「永遠のこどもたち」「MAMA」だってそう。
ビジュアル・センス、愛と哀のドラマ、ドロドロとした愛憎劇は、まさしく好み。

よくよく考えてみれば、デル・トロの本格コスチューム劇は初めてなのに、この安定・安心感!
舞台となる、もう一つの主役とも言うべき屋敷。
内装から小道具に至るまで、凝りに凝っている。
荘厳な美しさを感じさせると共に、この屋敷にはある忌まわしき血が流されており、それを反映してか、永住するにはちょっと勘弁…という雰囲気まで。
ヒロインが燭台片手に暗い屋敷内を捜索するシーンのダークな映像美、クライマックスになるが真っ白な吹雪の中に映える真っ赤な粘土と真っ赤な血。
デル・トロのビジュアル・センスが惜しみなく。
何故アカデミー賞で、美術・衣装・撮影・作曲辺りでノミネートされなかったのか。

幼い頃に母を亡くし、そしてまた不可解な死で父を亡くし、天涯孤独になったヒロイン。そんな時出会った魅力的な英国紳士。たちまち恋に落ち、結婚、英国へ。夫の姉も一緒に人里離れた丘に建つ屋敷で暮らし始めるが…。

悲劇のヒロイン。
遺産相続。
次第に明かされてゆく姉弟の秘密。
屋敷にまつわる忌まわしい事件…。
もう、これ、海外に舞台を移した横溝ミステリーでしょ!
今にもボサボサ頭ヨレヨレ袴姿の探偵が出て来そうだった(笑)(と言うのは冗談で)
濃密ミステリーさには欠けるし、人によってはチープな内容に感じるかもしれないけど、横溝ミステリーが好きな自分にとっては話も悪くなかった。

本作をホラーと思ってしまうのは、清水崇監督よろしく姿を現す幽霊。
また、幽霊が見えるというヒロインの不思議な能力。
幽霊登場シーンはホラー演出ではあるが、主人公に襲いかかり呪い殺す恐ろしい存在ではない。
亡者の奪われた声に耳を傾けて…。

海外女優の中でも屈指の白い肌を持つミア・ワシコウスカはコスチューム劇とゴシックな雰囲気がよく似合う。
スマートさとミステリアスさはトム・ヒドルストンの十八番。
で、ジェシカ・チャスティン。
この姉さん、怖ッ!
多分、一番のホラー要素は彼女。

デル・トロが「パシフィック・リム2」の監督を降りたのは残念無念だが、ならばまたこういう美とダークのゴシック・ミステリーを手掛けて欲しい。
ティム・バートンとタッグを組んだら、それはそれは素晴らしいゴシック・ミステリーもしくはホラーが出来るんじゃないかと妄想。

近大