マクベス(2015)のレビュー・感想・評価
全31件中、21~31件目を表示
撮影も役者もいいが、出来はいまひとつ
大学時代に福田恆存訳でシェイクスピアの戯曲はかなり読んでおり、四大悲劇の中では『マクベス』がいちばん好き。
というのも、他の三作では善悪(と単純には言い切れないが)・葛藤の対象が、それぞれ役柄があるのですが、この『マクベス』だけはマクベス本人の内側に善悪も葛藤も混在しているから。
それゆえ、現代性が高く、いま読んでも琴線に触れるだろう。
それを、当代の名優ファスベンダーが演じるのだから、期待しないわけにはいかないが・・・
オープニングのスコットランドの荒涼かつ陰鬱な風景は、その後の陰鬱な物語に重厚さを付け加える素晴らしい撮影なのだが、どうにもワンショットワンショットが短い。
かつ、マクベスの人物設定があやふやで、こんなのだったかしらん、と思ってしまった。
原作のマクベスは、かなり気弱な男として描かれており、それが三人の魔女の予言と夫人の唆しによって、謀反を企てていった。
そんな中で常に葛藤しており、その葛藤が観る者・読む者の心を納得させていたように思う。
しかるに、この映画では血なまぐさい戦場で血まみれになりながら獅子奮迅・強力・剛の者として活躍し、その後の謀反に対しての葛藤シーンがかなり割愛されている。
まぁ、そこんところを丹念に描くと、この映画の描写速度だと3時間をゆうに越えそうなので、簡略化したのかもしれないが。
この簡略化・省略が、映画全般を覆っていて、それが映画的リズムを遠ざけている。
簡略化で用いる手法は、フラッシュフォワード・フラッシュバックなどのカットバック。
次のシーン、もしくは以前のシーンを交互に描きながら進めていく手法。
映画としてのスピード感はでるのだけれど、映画で用いられる台詞は原典に忠実(だと思われる)。
よって、言い回しが大仰で、いわば勿体をつけたような台詞。
映像は速いが、台詞は遅いという、なんとも珍妙なリズムになってしまい、結果として、『マクベス』の見せ場数珠つなぎのダイジェストのような結果になってしまった。
撮影も役者もいいのに、映画としてはいまひとつ、そんなところ。
その上、台詞は原典から引用しているにもかかわらず、見せ場の二つが従来と異なる表現がされており、これにはガッカリ。
ひとつは、マクベス夫人が血にまみれた手を洗っても洗っても落ちない、というエピソード。
もうひとつは、動く森のエピソード。
その他、冒頭にマクベス夫妻の幼子を葬るという原典にないシーンが付け加えられているが、これが後半のマクベスの物語にあまり活かされていない(夫人が幼子の幻をみるシーンはあるが)。
あ、他にものべつ幕なし流れる陰鬱な音楽は、かえって興ざめ。
ということで、個人的には不満な一編。
観て読んだことには、出来ない。
「やっぱり横着しては駄目だったか…」と強く思った一本。
「アート映画」としては十分意欲的だし、鑑賞に堪えうる出来なのだが。
「観て読んだ事に出来る」程に、原典を物語りはしないのが難点だろう。
さんざマクベスを煽るだけ煽って、いざと言うときにはさっさとケツをまくり「自分可愛い」に逃げるポンコツ王妃の描写も大きなマイナス。
稀代の悪女だと聞いていたのに…原典でもこんなにショボイのであろうか。
それを反映してか、ギラギラと近年最高の演技を魅せるファズベンダー氏に対して。
コティヤール氏のなんとも「彼女で無ければならない」意味の無い存在感の薄さといったら。
まぁこの点に関しては世間の評判に対し、常に「え?そんなに?」と常々思っているので意外性は無いのだが。
公式宣伝文句「没後400年、シェイクスピアが描いた、地獄に一番近い愛」は感じられない作品。
まぁこれに関しては配給の宣伝が悪いのだけれども。
応援隊長やコメントで「観ていないことが丸わかり」の自社芸人を使ったり…
これに懲りて一般&文芸モノに手を出すのはやめていただきたいと切に願う。
つまらなかった。退屈で眠くて。
びっくりするくらい引き込まれない映画でした。
まずセリフが理屈っぽくて説明ばかりで、なにこれ?と。
展開も強引でありがちで、退屈。
映画はまず脚本が命ですね〜
俳優が魅力的で観ましたが、がっかりです。
この2人の評価もダウン。
シェイクスピアの、ということでせっかくなので鑑賞してみました。
原作、よく知らずに鑑賞。なるほど、黒沢『蜘蛛巣城』の元ネタか。
結局、日本も西洋も、権力欲におぼれてしまう性は同じということか。
とにかく、腕っぷしはいいが浅慮なマクベスのだらしなさと、マクベス夫人の悪女っぷりが嫌になる。
正直、台詞がよくわからないのが多かった。「いいは汚い、汚いはいい(だったか?)」とか。暗喩や、哲学的なものや、おそらくキリスト教の故事になぞらえた示唆や。もうちょっとお勉強してから観なおせば、もっと違った感想になるのでしょう。とりあえず、今回は、良すぎはしないが不可でもない、感じ。
最後、いずれ王になるか、王の親になるかの少年が、霧の中に走り去る。悲劇は繰り返される、ということか?、そこが一番、ドキリとした。
五感や頭を使うことを非常に必要としてる映画だ。そうすれば楽しめる!
素晴らしい。セリフの届き方と芝居で成り立ってる映画、心を構えて、良くも悪くもあくまでもシェイクスピアのドラマを観るつもりでいたら、とても楽しめる。
マイケルファスベンダーの迫力ややらしくない芝居、程よく目立たないそしてファスベンダーからけしてスポットライトを奪わないマリオンコティヤール「最後のシーンに見応えたっぷりあるが」、次々出てくる俳優達、子供役でさえも、皆が芝居を思い切ってやっていて、楽しんでいる、その緊張感がこっちまで伝わる。
編集やビジュアルの使い方も上手。所々をもっとロングテイクにしても良かったと感じるが、きっと、我慢の少ない今の客をさっすがに意識したのだろう。
ラストシーンも素晴らしい。
五感や頭を使うことを非常に必要としてる映画だ。
やっぱり、映画館にいる客の年齢層が高い 笑、
マクベスを読む気力や集中力のない若者に見て欲しい〜
一つだけの場面の為に作られた勇気にだけに、5星あげたい、音に期待があったせいか、音に少しがっかりした。映画館のせいかもしれないが。
やっぱり恐いのは人間
「清廉な男だと信じていた」
台詞が耳に残る。
上昇志向も良いけれど、不相応な野心と欲望を持つと、そればかりに囚われてしまい自滅の道を進む羽目に。
恥ずかしくなるくらい、台詞が詩的でドラマチック。
ラストシーン、何やら意味ありげな…
結局、人の欲望は留まるところ知らず、
ミイラ取りがミイラになるのか?
全31件中、21~31件目を表示