「薄味なシェイクスピア」マクベス(2015) everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
薄味なシェイクスピア
数多くあるランキングのどれかでしたが、共に美男美女第1位に輝いたことのあるお二人の共演ということもあり、楽しみにしておりました。
原著を勉強したのは20年余り前のことなので、再度読み直し、学者さん達の昨今の解釈をざっと読んでから鑑賞しました。
この作品の「新」解釈はそう珍しいものではないみたいですし、脚色も演出も作り手の自由ですが、今ひとつ言いたいことが伝わらない中途半端な仕上がりになってしまったようです。
本来のテーマを訴えるのなら、名場面を省略せずにもっと忠実に再現すれば良かったのです。もし子供すなわち直系にこだわり王座を廻る親戚間の戦いとして描くなら、実在のMacbeth夫人の息子は連れ子のようでしたので、「血の繋がった息子」欲しさに子持ちの領主に嫉妬するとか、もっと明確に脚色すべきでした。
映像化ならではの良い点は、舞台では再現困難な荒涼とした風景です。でも予算を削った感が出ていて、もう少し原作通りの背景で、趣向を凝らして欲しかったです。
台詞は前後したり、Rossの台詞をMalcolmが語るなど、細かい所は結構変わっておりました。
Macbethの残虐非道な暴君への変容ぶりはさすがFassbenderです。王冠や肩書きだけでは部下の真の忠誠心を得られないということは、よく描けていたと感じました。
それと、最後のシーンは個人的に好きです。Fleanceは父親殺しを疑われるくらいもう少し成長した青年の筈なんですが、剣を手にしたことで、残りの予言の実現性が増します。これも解釈のひとつに過ぎませんが。
確か予告のキャッチコピーで、「あなたの中にもマクベスがいる」みたいなのがあったと思いますが、本作から伝わってくるものは、「占い信じるとこうなっちゃうから皆気をつけようね」って感じになってしまいますかね…。原作未読の人が誤解しなければ良いと願うばかりです。