「見るのが辛いが、知るべきこと。」サウルの息子 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
見るのが辛いが、知るべきこと。
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あぁ、つらい映画体験でした。
エンタメ性は皆無です。しかし世界や人間性を学ぶ上で重要な物語だとおもいます。
サウルにだけピントが合っているので、その他の背景はぼやっとしています。でもそうしてないと、背景の悲惨さにやられます。
彼らは同胞の死体を見ないようにして自分を保っていたのかなと想像しました。
ゾンダーコマンドという言葉は聞いたことがあります。その実態の手触りみたいなものは初めて知りました。
埋葬を好む宗教観も知っていました。ユダヤ教では(キリスト教、イスラム教もですが)、死後の復活を信じているのでそのために体が残ってないとダメだから火葬はもってのほからしいです。
サウルはガス室で死にそびれてしまった少年を、息子だ!と、気づきます。
これは、本当に息子かどうかは、二の次です。妻との子ではない、というせりふがでてきますが、その真偽も定かではない。
私はたぶん思い込みなのだろうと思います。
なので、あの少年は赤の他人。
だけれども、息子だと決めて、せめて息子にはちゃんとした葬いをしたい。サウルのせめてもの願いなのだろうと理解しました。
葬いのための準備で、サウルは規律を犯していきます。殺されやしないかとハラハラします。
サウルの胸中とは関係なく、ゾンダーコマンドたちはなんとか反旗を翻そうと火薬だ武器だのを集めています。
それもまた、自分を失わないための小さな小な希望なんだろうと思います。
ラストでサウルは子供に微笑みます。彼には天使か何かに見えたのでしょう。
救いのない世界でした。しかし、現実に近いのだろうと思いました。
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