劇場公開日 2016年1月23日

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「まさに「カオス」の世界」サウルの息子 突貫小僧さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0まさに「カオス」の世界

2016年1月25日
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鑑賞方法:映画館

怖い

作品が始まって、いきなり四方からモップの音、毒ガス室に詰め込まれるユダヤ 人の悶え苦しむ声が。耳も目も覆いたくなる現実がそこに。見る私には、すこし 気分が悪くなるぐらい、 背中に大きな赤い「×」と記されたゾンダーコマンダーの主役が、顔色ひとつ変 えず、毒ガスの床をひたすら清掃している。かと思えば、マネキンのような死者 の塊が山積みとなって、ナチス親衛隊の厳しい声が四方八方から、そしてまだ 「部品」と呼ばれるユダヤ系の人間が、ガス室とも知れず、裸となってシャワー 室という集団虐殺室へ。これこそ、カオスの世界だ。サウルが息子のような 子供を急いで毛布でくるみ、自分のいる部屋向う慌ただしさ。アウシュヴィッツ収 容所では静寂などないといっていい。悲鳴と怒号が四六時中鳴り響いている。シャワー室をでて、ものいわぬ「部品」は焼却炉へ。画面から訴えかけるおぞまし い場面は 見ているものを容赦しない。それでも、ナチスの悪魔共は表情も変えず、流れ作 業のように「部品」を「シャワー室」へ押し込んでいく。サウルが持ち去った自 分の息子を、ひたすら隠しながら、自分の息子だけは、全うな人間として葬りた い気持ちが画面から伝わってくる。これまで、このような残酷で哀しい映画は あっただろうか。最後の場面には、 「恐ろしさ」だけが残った。

突貫小僧