「ヒロインが作品の生贄になっている」映画 聲の形 大江戸800野鳥さんの映画レビュー(感想・評価)
ヒロインが作品の生贄になっている
■↓僕の評価の目安(ザックリと)
☆★★★★:酷い(不愉快)
☆☆★★★:つまらない
☆☆☆★★:物足りない
☆☆☆☆★:満足♪
☆☆☆☆☆:衝撃!!!
※上記に基づき採点すると、本作は☆1.5あたりでしょうか
(因みに原作漫画は、1巻の『試し読み冊子』を鑑賞前に書店で読みました)
■劇場で2回観たけど・・・
トイレを我慢していて集中できなかった1回目を反省し、改めて劇場で鑑賞。
それでも「マジか?」と思いました。
前半は不愉快
中半は退屈
後半は苦痛
129分のはずの本編が「体感200分」に感じるほど、ひたっっすら長い!!
終始「良いトコなし」。
■「物語を引き立てるため」のイジメに疑問
転入してきた女の子の「耳が聞こえない」というキャラに、バカみたいに「興奮する」主人公と、
とっつきにくさから「からかって距離を置く」主人公の隣の席の女子。
耳が聞こえない転校生のヒロインには、「隣に座ってくれる生徒」も居ません。
転入早々ヒロインが聾啞であることで掛けてしまう「クラスへの迷惑」を片っ端から描き、
思いつく限りの中傷と身体的苦痛と侮辱をヒロインに延々と与え、ただひたすらに
「悲劇のヒロイン」に仕立て上げていく「作り手の悪質な手口」に不快感すら覚えます。
これらがすべて、高校生になった主人公の「過去の罪への後悔」を描くためだけに積み重ねている
ものだとすると、ヒロインは「作品の生贄」でしかないわけです。
■この主人公の物語に「ヒロインを虐めた過去の事実」は不要
高校生になった主人公は口調そのものが変わり果てており、小学生時代のやんちゃな面影を
微塵も垣間見ることが出来ません。
(同じく孤立していたクラスメイトの友達には、最後まで『~君』と呼ぶ始末)
そして元クラスメイトの女子からは「ダサくなった」とすら言われます。
(まあ、いい年こいて、未だにヒロインの補聴器を毟りとって昔のように虐めようとするコイツの方がダサイと思いましたが)
とにかく、高校生のときの主人公と小学生時代の主人公が「別人」にすら思えます。
そのせいで、この主人公が「昔ヒロインを虐めていた」という事実が、頭の中で繋がらないのです。
そもそも小学生のときに「虐めてしまった」から話がこじれるわけで、
初めから「小学生時代のイジメのエピソードを描かなければよい」わけです。
「こじれなければ物語にならない」というかもしれませんが、それこそ「本末転倒なお話」です。
2時間以上も「本末転倒なこじれ話」を見せられれば、たとえ背景が綺麗でもアニメーションが
滑らかでも、観ているこっちはウンザリします。
「自殺まで考えた内気で孤独な高校男子が、ある日『耳の不自由な女の子』に恋をして手話を覚え、
女の子や少しずつ増えていく仲間との交流を通じて人生を前向きに生きようと歩み始めるまでの話」
↑正直これで結構です。
■社会派?「所詮はアニメ」と思った不満点の羅列
①一向に老けない主人公の母親
この母親、美容師とは思えないくらい、何年経っても一向に「髪型が変わりません」。
(というか、主人公も)
ある意味、母子ともに「ダサイ」です。
②燃える170万円
ギャグのつもりでしょうが、「燃える必要」が全くありません。
(『作り話』でも好きではないです、こういう演出)
③突如として消えた「重罪人」
ある意味主人公よりも罪深い、小学校時代の「担任教師」。
なのに、あのステレオタイプのサラリーマン教師は、小学生編のあと「一度も現れない」。
(これは原作もか?)
「君の名は。」でも、主人公のバイト先のイタリアンレストランで「(自分で刺した)ピザのつまようじにクレームをつけて、
代金を踏み倒すチンピラ」が現れますが、これも主人公と憧れの先輩店員との距離を縮めるために登場させただけで、
そのあとは登場することなく「野放し」。
物語の世界の中にも「現実の日常」は存在するです。
あの担任教師もこのチンピラもは、まだ作品の世界の中では「平然と生きています」。
作り手はそれを忘れちゃいませんか?
いずれも「作り話とはいえ、それはないだろ!」と言いたいです。
④障害者のヒロインが転校してきたときの「学校側」の対応
この作品が「魁!!男塾」なら別にいいんです。
この作品は「現実的な物語」を描いたつもりなのでしょう?
であるならば、現実の学校相応に「受け入れる準備」をこの小学校も整えるべきではないでしょうか。
(なのに、この学校が整えているのは『孤立させる準備』ばかり)
どのクラス(担任)に預けるか?
手話のできる職員や副担任の手配
「隣に席を移動してもらう生徒」の手配
そして生徒への説明
な~んにも無いんだもんこの小学校。
教育者でも障害者の家族でもない僕ですら疑問に思うことだらけです、この学校の体制には。
しかもこの担任は、ヒロインの障害についての説明は一切せず、ヒロインに「自己紹介の全て」を押し付けています。
むしろ「この担任」を主人公にして、過去の過ちを反省させて手話を覚えさせ、ラストでヒロインに謝罪させたほうが、
よっぽど「良い映画になる」
~と思います。
⑤病室から抜け出してきた「ケガで入院中」の主人公の腹部を「突っつく」ヒロイン
「えっ、本物?生きてるの?」ってことの確認なのだと思いましたが、マジ「正気か?」と思いました。
(これは演出側が悪い)
■まとめ
~とまぁ色々文句ばかり書きましたが、ほんと「文句」しか出ません、この作品。
意外と楽しめて、何度もリピートした「君の名は。」。
映像作品に生まれて初めて「観る事ができたことへの感謝」をした「この世界の片隅に」。
昨年、上記2作と並び称された本作。
今回、満を持しての鑑賞となりましたが、結果的には僕の中で、本作だけが「置いてけぼり」となってしまいました。