「ショートとは何か、分かる過程が楽しめた。」マネー・ショート 華麗なる大逆転 gentさんの映画レビュー(感想・評価)
ショートとは何か、分かる過程が楽しめた。
おかげさまで、とくべつな金融知識はありません。貯金のすべては都市銀行の低金利普通預金に入れております。
そんな私に、この映画は空売り(ショート)の存在を教えてくれました。
なるほどねー。元金分しか持ってなくても、額面で売買するんだ。だから、資金が少なくても、大きく利益が出せるのか!
主人公が賭けたのは投資商品に付帯する保険の方。だから、保険料の分だけは払う必要がある。少しだけ買っているなら少額で済もうが、彼らの元金の購入額は数千万から億単位である。投資商品ができるだけ早く破綻してくれないと巨額の保険料が資金を圧迫してしまう。
この賭けを始めてから本当に破綻するまで、およそ2年。その間、その保険を組み入れたファンドの運用益がマイナス10%まで落ち込んだ時期もあった。主人公たちのストレスの具合がうかがい知れる。
この映画を見て学べることは、誰がどう見てもおかしいことはおかしいと自分の頭で考えて、自分のその考えを信じることの大切さだと思う。
主人公たちが、現場に行って現状を確かめてから巨額の投資をするのを見て、投資で成功する人のやり方を知った。
新聞やネットで情報を集めたり、過去のデータを分析したりとか、そんなのは投資の根拠にならないのだ。
まして、金融機関や政府が「安全」などというのを鵜呑みにしてはならない。人から伝えられる情報には、思惑が加算されている。
映画を見てから、それをいうなら日本の国債なんかも、その類いなのではないかと思った。国債には保険はついてないのかしら。
と考えると、この賭けはとても恐ろしいものだということに気がつく。
金融商品が破綻すると儲かるというのは、多くの同胞を切り捨てて、その犠牲の上に自分だけ助かろうとする行為である。金と人間のどちらが大事?破綻を防ごうとするのが人道的な態度なのではないの?
という賭けが成功するジレンマに、主人公たちが気がついている点もよかった。
もっとも、こころのなかでは、儲けは自分を信じた成功報酬なのだから、受けとる資格があると思っていたかもしれない。でも、負けた人の前で大喜びすると、負けた人の心証を損ねて、自宅に放火されるかもしれないと計算して、作品化にあたって付け加えた建前かもしれない。名誉毀損になっていたら申し訳ないけれど、そこのところは、分からない。
まとめると、映画のはじめの方は、主人公が多いことも含めて情報量が多く、ちょっと頭の整理が大変だけれど、情報が多いだけに、知識のない人に分かりやすくできていると思う。少なくとも、分かりやすくしようとした努力の痕跡は見える。
本当に込み入っていて退屈になりそうなときは、泡風呂に入っているお姉ちゃんに説明させたり、ラスベガスのテーブルになぞらえたりして、いかに飽きさせないか工夫が凝らされている。
個人的には、メタリカを大音響で流し、オフィスを裸足で歩くアナリストの人が気に入った。人の目を気にしない人が見えるものて、あるのよね。このように、自分を信じきることのできた人たちの生態も、見る価値のある映画だと思う。