「もうひとつの人生」あやしい彼女 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
もうひとつの人生
クリックして本文を読む
Amazon Prime Videoで鑑賞。
オリジナル版は未見。
主演の多部未華子が縦横無尽に魅力を振り撒く。
ばあさん―ここでは敢えて「ばあさん」と書くことをお許し願いたいが、その口調や仕草が抜群に上手い。気の強いばあさんのやりそうな動きを完全再現していた。ちりちり頭のカツラや服装が似合っていたのは顔立ちのせいだろうか。倍賞美津子のカツが多部未華子の皮を被って演技しているのではないかと勘ぐりたくなったほど。さすがの一言では足りない名演だ。
そして歌。こんなに歌が上手いとは知らなかった。見た目はハタチだが中身は73歳、演者自身も年輩にはほど遠いと言うのに、人生の年輪が歌詞に乗り、聴く者の心を打つ、と云う描写に説得力を持たせる圧巻の歌唱力に聴き惚れた。
もう一度人生をやり直せるなら…。そんな夢想を誰もが一度はしたことがあるのではないだろうか。斯く言う私など、ほぼ毎日空想しているようなものだが、本作の主人公はひょんなことから若返り、若かりし頃の密かな夢であった歌手デビューへの道を歩み始める。身内にいつ正体がバレてしまうのかとか、幼馴染みの次郎とのやり取り(罠にかかるシーンはかなり笑えた)にクスリとしている内に、人生の意味について考えさせられてしまうストーリーがとても面白く、引きつけられた。
夢を掴む寸前、節子(カツ)が選んだ道にうるっとした。何かを犠牲にしたり、後悔したりしながら歩むのが人生かもしれない。だが、やり直したいと思うことがあっても、やはり今のこの人生が最良だと思わせてくれる、素晴らしい映画だった。
コメントする