ビースト・オブ・ノー・ネーションのレビュー・感想・評価
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すごかった
子どもが悲惨な状況に追い込まれるのは目を覆いたくなる。うちも小2の男の子がいて、もしあんな目にあったらと思うと心が苦しい。しかし、自分の立場は最初の方に殺される父親で、助けることができなくて無念だ。性的虐待を受けてしゅんとする場面がつらい。口のきけないストライカーと言う友達が撃たれて死ぬのもつらい。
こんなふうにもし軍が攻めてきたら絶対に森に逃げるべきだと常に考えているのだけど、その森でゲリラに捕まってしまうので、もうどうにもならない。
獣か悪魔か、子供か
Netflixのオリジナル映画が見たくてNetflixに加入。加入したからこれでもういつでも見れると呑気に構えていたら、新作配信ばかり見て、過去の配信作品が後回し後回し…。
随分と溜まってしまったので、新作の劇場公開やレンタルの合間合間に少しずつでも気になる作品だけでも消化していこうかと。
という事で、2015年に配信されたNetflixオリジナル映画の第1弾。
製作第1弾作品って重要。スタイルや方針が決まるからだ。
だからまずは万人受けする作品でアピール。ドリームワークス第1弾作品は娯楽アクション『ピースメーカー』だった。(懐かし~)
しかしNetflixオリジナル製作映画第1弾は、衝撃作。
これが後に『ROMA/ローマ』に繋がり、賞レースも席巻する原点だったんだなぁと思わされた。
西アフリカのある村。
家族と暮らす少年アグー。
貧しいながらも平穏だった生活は突如終わりが訪れる。
政府軍侵攻による内戦。
母親と幼い妹は都会へ避難。父親と兄と共に残るも、スパイ容疑を掛けられ、父親と兄は殺される。
アグーは密林へ逃げる。
そこで遭遇したのは、武装した集団。政府軍と対する反乱軍。
そのほとんどが子供たち。少年兵。
危うく殺されそうな所を、少年兵たちを統括する指揮官に助けられ、彼らに加わる…。
平凡な一人の子供が少年兵へ。
それも衝撃的だが、さらに衝撃的なのが…、
冒頭、友達らとTVの枠で“妄想TV”と大人たち相手に小遣い稼ぎしていたアグーが、銃を手に…。
度胸試しとして殺しを要求される。この時は出来なかったが、別の少年兵が斧で相手の頭をかち割る。言葉を失った…。
アグーもやがて少年兵として“武勲”を立てる。指揮官から目を掛けられるほどに。
しかしそれは、侵攻、略奪、暴行、殺し、レイプ…。
自分から家族を奪った所業を、自分が行う。
嗚呼、何という不条理…。
子供たちが“子供”ではなく、“殺戮の道具”と化していく様にゾッとする…。
それでもまだアグーには葛藤がある。
何もしなければただ殺されるだけ。生き抜く為に手に銃を取った。
が、自分の手で人を殺していく。何人も何人も何人も…。
自分がやってる事は正しい事なのか…?
この緊迫と常に生と死の狭間、混沌と混乱の中で、意図していなかった自分の中の“ビースト”が剥き出しになり、善悪も理性も分からなくなっていく…。
葛藤があるのは指揮官も。が、彼の場合はちと違う。
指揮官として、少年兵らの“父親”として、一介の兵士として、己や部隊、任務に誇りを持っている。
が、彼もまた組織の一員。時に“最高司令官”からの命令を苦々しく思う事も。
ある時最高司令官に呼び出される。遠方から遥々訪れたものの、散々待たされ、ようやく対面。念願の昇進かと思いきや…、
最高司令官は目を掛けている副官を指揮官に。指揮官は異動…ズバリ言うと、後方へ降格。
納得いかない。俺の部隊だ!
ある反乱を起こし、離脱。
これが指揮官とアグーら少年兵の運命を揺さぶる事に…。
キャリー・ジョージ・フクナガ監督の迫真に満ちた演出。
フィクションだがノンフィクションのようなリアリティーや恐怖があり、争いの愚かさやそれに翻弄される行く末は、“今”にも通じる。
アグー役のエイブラハム・アターはオーディションで発掘されたらしいが、全くの素人の子供の才能は本当に無限大だ。
他の子役たちも然り。
そんな彼らを、イドリス・エルバが名サポート。こちらはさすがの存在感。
武器も食べ物も底を尽き…。
遂に指揮官に反乱。多くが離脱する。
アグーも。自分に目を掛けてくれた指揮官と決別…。
指揮官は言う。必ず、お前は私の元に戻ってくる。
アグーらは国連軍によってリハビリ保護施設へ。
そこでは教育を学び、食べ物や寝床もある。
子供らしく生きる事をやり直す。
正しい事かもしれない。が、アグーはまだ葛藤する。
ここで療養してまた社会に戻れば、平穏な生活を取り戻せるだろう。
その一方…。ここでの暮らしは一見自由のように見えて、監獄暮らしのよう。ここを出てからも、見知らぬ大人たちが決めたレールの上を行く事を強いられる。
アグーは言う。自分は獣や悪魔のような行いをした。
しかし元は、家族に愛され、平穏に暮らしていた。
彼はまた以前のような暮らしを取り戻せるのか、指揮官の言葉通りあの狂気の中に戻ってしまうのか…?
アグーだけじゃない。同じ境遇の元少年兵はたくさんいる…。
彼らの行く末は分からない。
が、ラストシーンの、海で戯れる子供らしい彼らを信じ、願いたい。
最後のシーンで再び苦悩する
戦争は未だに続くものなので、先進国生まれの私は加担しているという意識で観ていました。
純粋で子どもらしい男の子が、それ故に戦争という地獄に心身共飲み込まれていく様が本当に恐ろしかったです。
最後子どもに戻っていきそうなシーンで終わりますが、彼が大人になり全てを理解した時に再び大きな地獄に落ちてしまうのだろうか思うと、戦争は永遠に終わらない地獄です。
どうすれば良いのか、出来ることを考えていきたいと思います。
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