ボーダーライン(2015)のレビュー・感想・評価
全244件中、161~180件目を表示
麻薬戦争のファンタジー
脚本家がケイト・メイサーを男にすることを提案してて、たぶんその方が大作になったと思います。ただ、この映画のストーリーはおかしくて、ベニチオ・デル・トロ演じるアレハンドロが検事だったのに殺し屋みたいになっていて、現実にありえない設定だと思うんですが、これはメキシコの現実が映画で描けないようなものなので、このような物語に落ち着いたということでしょう。そして希少な正気の人間ケイト・メイサーという女性はエミリー・ブラントじゃないと演じられないくらい微妙な、肉体的にも精神的にも踏んだり蹴ったりな役をお涙ちょうだい的ではなく、清々しさとのギリギリなバランスで演じており、俳優として魅力のある映像を見せてくれたと思います。しかし、ベニチオ・デル・トロの演じたアレハンドロは何なのか?ほぼ007なみの仕事をこなして続編でもやる気なんでしょうか?
アウトローを傍観するしか無い者達の物語
巨大化するメキシコ麻薬カルテルを殲滅すべく、超法規的特別部隊にリクルートされた、エリートFBI捜査官ケイト。
彼女は部隊への参加を悩むが、今の立場では末端の犯罪者が起こす事件の火消しに追われるだけで巨悪の根源に辿り着く事はできないと、ピュア正義感から舞台への参加を志願します。
しかし麻薬カルテルとの戦いの現場は彼女の想像を超える法無き世界だった…
そんな感じでこの映画は始まります。
序盤の展開を見てこの映画は『ゼロ・ダークサーティー』や『トレーニングデイ』のような新米捜査官が先輩捜査官にしごかれ、数々の修羅場をくぐって成長し、一人前の『兵士』に育ってゆく物語なのだな……と思っていました……
ところが!
現場に放り込まれた主人公ケイトは、参加している作戦の意味も良くわからず、周囲で起こっている状況も理解できず、そもそも同僚やその周辺の人間さえも敵なのか味方なのか信用することができない……
彼女は終始状況に振り回され続けるだけで、見ている観客も彼女と同じ気持ちを味わされる事になります。
そう、この映画は前記したような新米捜査官の成長を描くような作品ではなく、観客をメキシコ麻薬犯罪の現場にブチ込み、そのカオスを味あわせる映画なのでした…!
そんな過酷な状況でも主人公ケイトはなけ無しの勇気とプライドを奮い立たせ、巨悪に対して『法の裁き』を下すべく孤軍奮闘します、それが彼女の信じる『法治国家』の姿なのでしょう……しかしその姿は『法』を超越した戦いを繰り広げる犯罪組織や同僚達の前には滑稽でさえあります。
『悪』を制するには自らがそれを超える『悪』になるしかない。
『イコライザー』や『ジョン・ウィック』等の映画ならばそんな情け無用の『アウトロー』の姿をヒロイックに、口当たりの良いエンタテイメントとして表現していますよね……
しかし『ボーダーライン』に登場する”アウトロー”が行う『正義の裁き』は善悪の”ボーダーライン”を完全に越える非人道的な所業でした……
そんなアウトロー対して”ボーダーライン”を越えることができず、ちっぽけな『正義感』に固執し続けることしかできない主人公ケイトは情けない姿を晒し続ける事しかできません……
でもそんなケイトの姿は『法』に守られていなければ平穏に生きてゆくことができない僕達と何ら変わないのですよね…
『ボーダーライン』はそんなアウトローの所業を傍観するしか無い私達の『苦い正義の物語』なのでした。
〜怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。
おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。〜
フリードリヒ・ニーチェ『善悪の彼岸』
ノンフィクションのような緊張感が持続する
いや〜100本に一本出会うカンジの、
ヤバい作品です。
いつものように、
劇場予告編だけの情報だけど、
スルーしなくてよかったぁ!
素晴らしいのは、
この映画に段取りくささや、
ヒーローモノ的な甘さは無い。
それが全編にわたって、
とてつも無い緊張感を持続してるんだな。
米国の隣のメキシコで、
凶悪な麻薬カルテルと戦う捜査官のお話。
目を背けたくなる描写が、
終わらない麻薬抗争を浮き彫りにしていく。
しばしば主観的に描かれるカメラワークに、
いかにもその場に居合わせてるような臨場感。
監督の思惑にやられて、
劇場では固唾を飲んで見守るしかないよ。
とにかくリアルに振り切ってるのが、良かった。
まるでドキュメンタリーを観てる感覚になり、
終始フィクションなんだとリセットしました。
尺の都合、都合のいい部分もあるけど、
それ以上に演出が上手い。
実験的な構図や映像や音響も差し込んでくるけど、
決してテーマから逃げてない。
そしてカメラがいいなぁと思ってたら、
スカイフォールなどの名匠、
ロジャー・ディーキンスさんなんですな。
監督との次作、ブレードランナーも、
超楽しみです!
カルテルに家族を殺され、
正義なんかどーでもよい、
復習心に燃えた捜査官の演技は、
オスカー級だった。
あんな目で追いつめられたら、
死を覚悟するしかない。
もう心は生きてないからね。
彼がとったラストの行動は、身震いがした。
これこそリアル。
普通の映画なら、ぬるくなってるんだろうな。
ちなみに、実際家族を
麻薬シンジケートに殺された捜査官は、
結構いるみたいですね。
そんな現実も、恐ろしい。
演じたベニチオ・デル・トロさんは、
脇役で様々な作品で見たことがあるけど、
すごいキャリアの名優。
いい作品に出会えて良かったね!
その意気込みがジンジン伝わってくる。
ジョシュ・ブローリンも渋いね!
エミリー・ブラントも
プラダから実力派で頑張ってるけど、
このアクの強い二人とは、
勝負にならなかった。
けどね、
唯一この映画でぬるかったのが、邦題だよ〜(笑)
配給さんだめじゃん、
こんなテレビドラマみたいな安直なのつけちゃ!
キャッチコピーも「その善悪にボーダーはあるのか」って、
もうそんなナメた話じゃないでしょ。
「SICARIO シカリオ …とはスペイン語で」なんて、
ご丁寧に冒頭でタイトルの説明までしてくれてるのにさ。
きっと本国で監督はプンプンだよ。
こんなふうに作品のカタルシスが失われそうな場合は、
オリジナルタイトルでの公開を英断してほしい。
せめて、サブタイトルにするとか。
それが映画に対しての、
当たり前の敬意だと思うのですよ、うん。
ヨハンヨハン
デル・トロがいるだけで。
これがメキシコ麻薬戦争の実態だと云わんばかりに凄惨な映像が続く。
そもそもフアレスって聞いただけで過去作思い出してゾッとするのに
何でまたこんな美人お姉ちゃんが送り込まれるわけ?って凄い違和感。
結果、この違和感が最後には活きてくるんだけど、そもそもメンバー
にデル・トロがいたらさ、こりゃヤバい!って普通思いますわよねぇ^^;
明らかに違うもの~佇まいが。平和な日本人には理解しきれない度を
超え(すぎ)た戦慄の殺害場面も多くとにかく皆殺しってのが怖すぎる。
(向こうじゃ普通か)ナニ正義振りかざしてるんだこのアマ!って言い
たくなるほど大甘な期待は崩れ、さぁどうする?的最後の選択も地獄。
私だったら?もちろん黙ってますよ。だって死にたくないですからね。
(サンダル履いた奴を信用するな、には笑えた~。ブローリンだし^^;)
コレジャナイ感
予告を見てかなり期待していたが、想像とはちょっと違う感じでガッカリした。
任務遂行のやり方に倫理的な問題を感じて、主人公が抵抗したり、振り回されたりするが、いまいちピンと来なかった。
というのも、南米の麻薬戦争を扱う映画となれば、同じ題材の作品を見てきた観客にとって、エグい展開は織り込み済みのはず。
しかしこの映画の主人公は、そんなの聞いてないわ!と言わんばかりに戸惑うだけなので、何を生温いことを言ってるんだと思ってしまう。
物語上のリアリティの基準(通常の捜査)が描かれないので、主人公の倫理観やFBIのルールが伝わらなかったのが問題なのでは?
麻薬カルテルとの戦いに勝つためには綺麗ごとじゃすまない、ということだろうが、終わってみれば主人公が私怨に利用されただけで、諸悪の根元がどこにあるのか等の問題には全く踏み込まないので、麻薬戦争を舞台にした単なるフィクションという印象。
序盤の衝撃的な突入捜査や、フアレスの街の強烈さは良かったが、それ以上の驚きや盛り上がりはなかった。
冷酷非道な名脇役俳優2人組み
境界線の真意は
アメリカとメキシコの国境の町フアレスで麻薬組織ソノラカルテル撲滅に向けて極秘任務が遂行される。
冒頭からカルテルの意味を妙に意味深があるような伝え方で演出するのがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の特色でもあり、雰囲気で監督の世界に自然と入り込めるのは異質で心地よい。
まず言いたいのは世界観が非常に素晴らしい。FBIと聞けば警察のエリート集団というイメージがあるが、それも冒頭のシーンで覆される。迅速に制圧する突入部隊だが、悲惨な現実を目の当たりにすると嘔吐するものまで。この様子はかなりリアリティを追求しているものと思われる。
ここからカルテル撲滅のために物語は展開していくわけだが、とにかくフアレスという麻薬に染められた町がどれだけ危険かという雰囲気作りが他のクライム映画に比べ突出している。
重低音が響く汽笛のような音が連続する音楽、夜の行動を暗視ゴーグル主観や上空からの空撮映像と巧みに使うカメラワークもリアリズムを生んでいる上にこちらにも興奮度が伝わってくるのは魅力的。
更に言えば冒頭の突入を含めこれまでの成果が認められ今回のフアレス制圧に抜擢された女性FBI捜査官ケイトをはじめ、個性あふれる人物が多いのも特徴の一つ。特に異様な雰囲気を醸し出しているのがベニチオ・デル・トロが演じたコロンビア人。これに関してはデル・トロに感服するしかないがこの存在は本作の大黒柱といっても過言ではない。そして、ケイトのエリート捜査官という肩書の意義がラストに集約されているところで、ただのクライム映画とは一味違うところを証明してくれている。
見応えはあるけれど
主人公の役割って?
うーん
ハートロッカーやゼロダークサーティー、アメリカンスナイパーなど、対テロを題材にしている映画に近いものがあるかなと思っていたので、もう少し緊迫感あるシーンを期待してました。
内容は興味深いものですが、詰まる所、復讐劇に国が加担しているっていう構図がほんとうにあるのか?!と感じざるを得ない作品でした。
全244件中、161~180件目を表示