「ドキュメンタリー感覚で観るべき作品」ボーダーライン(2015) きーとろさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリー感覚で観るべき作品
あまり多くを語らず、視聴者に委ねるところが多い作品です。場面場面の繋がりがサラッと描かれていてわかりにくいので、しっかり観ていないと私のように状況がわかるような、わからんような…というふうになってしまうので注意です。
鑑賞後に解説等を拝見して、自分なりにではありますが理解を深めてからレビューをしているので、そこはご安心ください。
物語の性質上、話をはぐらかされ続けるので、もやもやします。そうしてもやもやを抱えた先に、隠されていたことが明かされますが、わかってスッキリ!となるような内容ではありません。
終始重々しく、特に終盤は哀しさや虚しさ、息苦しさを感じました。スッキリ爽快な気分になりたい時にはおすすめできませんので注意。
彩度が低く、色あせたような色調が作品に合っていました。ドゥニヴィルヌーヴ監督は絵作りが上手いなあと思います。特にトンネル突入前の沈む夕日に浮かび上がるシルエットがとても格好良かったです。
主観での暗視スコープの演出は緊張感と臨場感がありました。
演技面も良かったです。エミリーブラント演じるケイトはキリッとしていて芯が強そうな女性なのですが、ストーリーが進むにつれて辛そうだったり物憂げな表情を見せるので、とても感情移入してしまいました。
ダニエルカルーヤも脇役ながらいい味出していました。本作の良心で癒し的存在です。
ベニチオデルトロはさすがの存在感で格好良かったです。彼が映ると画面が締まりますね。何を考えているのかわからなくて怖いけど優しさも垣間見えて、いいキャラでした。
作戦の動向よりも、疎外感にイラついたり、善悪のボーダーを越えた世界に心が付いていかず苦悩するケイト、の印象が強く心に残りました。
ただ、視聴者目線では、映画での所構わずドンパチする事態に慣れてしまっているので、本作が現実に忠実で、ケイトがFBIとしての規定や秩序を重んじてきたのがわかっていても、あまり共感はできませんでした。
むしろ作戦の内容や目的をはぐらかされ続ける上にFBIでは優秀とされているにもかかわらず、素人扱いされる無力感の方が辛かったです。
本作はドキュメンタリー感覚で観るべき作品なのだと思います。
邦題の『ボーダーライン』、私は好きです。そのまま国境の意味もありますし、善悪や倫理の境界の意味も持たせています。作品の雰囲気にもあっていると思います。
原題『SICARIO』(スペイン語で「暗殺者」)の方が脚本の意図に関しては伝わりやすいですね。視点が変わります。
余談になりますが、私は字幕で鑑賞しましたが他の方の解説を読んでいると、ニュアンスが伝わらないセリフがあることに気づきました。ラスト近い場面なので細かく書くことは避けますが、観ている時に違和感があった部分だったので納得でした。作品の雰囲気としては翻訳を簡潔に短くした方が似合うのはわかるのですが、意味合いが伝わるようにして欲しかったです。吹き替えだとどうなのだろうか。英語を聞き取れればそれが一番なのですがね。