「悪が、肉体の表面を突き破る」ボーダーライン(2015) f(unction)さんの映画レビュー(感想・評価)
悪が、肉体の表面を突き破る
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自分の側が正義だと思っていた。しかし悪が、表面にある正義を突き破って、オモテに出る。気づいたらラスボスは自分自身(正確には自分の味方)だったー。
信じていた自分自身が、ラスボス。「自己」を疑問に持つ人物を作り上げる、ヴィルヌーヴ監督らしい作品。(『灼熱の魂』『ブレードランナー2049』など)
『メメント』をお手本とした、直近20年間の映画の語り口の一大テーマでもある。
自己探求+どんでん返し。自分を疑え。
アメリカ/メキシコを隔てる境界線。
そこでは同時に、正義/悪というコントラストが存在している。
車列は境界線を越える。と同時に、「正義」陣営の内に秘められた「悪」が首をもたげる。そして表面にある「正義」の皮を破って、露出する。「悪」の土地では、己が意思のままに銃撃殺人をおかしてもいい。正義の実現を目的とした、悪の実行。いいやそれは悪事ではない。単なる、目的達成のための手段。アメリカの国益。より大きな利益のために、小さな悪事を見逃す。(でも、ミクロな視野に立つ主人公に見えるのは、悪事だけ)
車列が正義→悪へと境界線をまたぐ
悪が、肉体の内部から外へと表皮を破ってあらわれる
ラスボスが、自分(達)の内側から現れる。
……「領域Aから領域Bに物体が移動するイメージ」で語りきった作品だと思います。おもしろい。
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