「まったく将棋のルールを知らなくても、心理戦の"凄み"が伝わってくる」3月のライオン 前編 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
まったく将棋のルールを知らなくても、心理戦の"凄み"が伝わってくる
神木隆之介が主役のうえに、有村架純、佐々木蔵之介、染谷将太、伊藤英明、豊川悦司…と主演級がズラリ。そして監督は「るろうに剣心」、「バクマン。」の大友啓史監督と、重厚な布陣である。
さらに、"3月(春休み)前編→4・5月(GW)後編"も、大作の興行パターン。昨年でいうと「ちはやふる」のポジション。
どうしても棋界モノということで、昨年の「聖の青春」(2016)が出てくる。夭逝した天才棋士"村山聖"を主人にしたノンフィクションベースの作品とは比べてはいけないのだろうが、棋戦の迫力に格段の差がある。一見、"静的"である対局シーンを激しい"動的"描写に昇華させている。これは「るろうに剣心」で時代劇の殺陣の常識を翻した、大友監督の演出力だ。
棋盤ではなく棋士の表情をクローズアップし、心理変化を言葉(セリフ)で描き、シンクロする音楽、加えてひとりひとりの演技力の高さ。まったく将棋のルールを知らなくても、その”心理戦”に引き込まれていく。人生をも映し出す"凄み"が伝わってくるはずだ。
もちろんルールを知っているほうが面白い。さらに棋界をモデルにした登場人物の数々もいちいち楽しい。
染谷くんが特殊メイクで演じる肥満体の棋士、"二海堂晴信"は、先の村山聖がモデルであることはすぐに分かる。怒涛の出演本数をこなしていた一時期に比べて、ご無沙汰な染谷くんだが、この特殊メイクでの演技はさすが。
(2017/3/18 /TOHOシネマ日本橋/シネスコ)
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