「街の息吹と名優ふたりのいぶし銀の魅力を堪能」ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
街の息吹と名優ふたりのいぶし銀の魅力を堪能
「ウィンブルドン」(05)で爽やかな笑いと愛とドラマを紡いだ名匠が、今作では米ニューヨークを舞台に、愛らしくも胸に染み渡る夫婦の物語を紡ぎ出した。街はテロ騒動で大渋滞が続き、老いた愛犬は急病にかかって病院に担ぎ込まれ、そんな中で長年住み続けたアパートを売る手筈が進んでいく。かくも様々なハプニングに見舞われながらも、さすがモーガン・フリーマンとダイアン・キートン(両者ともにNYは第二の故郷)演じる夫婦は、まるで彼らの周りを世界が回転しているかのように常に微笑みを絶やさず悠然としている。そんな名優たちから滲み出る余裕が、劇中の夫婦がそれぞれ経てきた人生とも絶妙に折り重なり、全てが立体感を増していくかのよう。部屋とはその住人の内面世界の表れであり、その人が生きた証。室内に入った瞬間、その香りが視覚的に伝わってくる見事な美術、そして部屋から望む風景もまたこの映画の宝物というべき素晴らしいものだった。
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