劇場公開日 2016年1月30日

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「歳をとるにも「コスト」なんだよね。」ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5歳をとるにも「コスト」なんだよね。

2016年8月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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世界の大都市である、Tokyo,Japn の物価の高さは、飛び抜けていますね。
過去のランキングでは常にトップだったようです。
当然のごとくニューヨークも、やっぱり「お高い」
世界を代表する大都市の一つだから、それも仕方ないかもしれませんが。
本作に登場する老夫婦。
モーガン・フリーマンとダイアン・キートンが演じる、アレックスとルースの熟年ご夫妻。
この二人は、大都会のアパートメントに、40年間暮らしてきました。
部屋は5階建ビルの最上階にあります。
眺めは最高。
ニューヨーク、ブルックリンの街を、独り占めできるような展望です。
夫のアレックスは、そんな部屋をアトリエにして絵を描いている画家です。
アレックスは毎朝、愛犬のドロシーと散歩に出かけます。
このドロシーとも長い付き合いです。ペットというより、もはや家族以上の存在。
散歩の途中でコーヒーショップへ立ち寄り、二人分のコーヒーを持ち帰るのが日課になっています。
アレックスとドロシーは、ふたりして朝の散歩を終えて自宅に帰ってきました。
アレックスの片手にはドロシーのストラップ。もう一方の手には、二人分のテイクアウトのコーヒーを乗せたトレイを持っています。
最上階5階までの階段を、一段、また一段、のぼってゆくアレックスと愛犬ドロシー。
やれやれ、体がきついなぁ~。
歳を重ねるごとに、5階まで登る階段がきつくなってきました。
愛犬ドロシーも、寄る年波に勝てず、階段を登る途中で休憩するような有様です。
というのも、このビルには、そもそもエレベーターがないのです。
それ以外は、ほぼ完璧な「物件」なのですが。
そんな二人を見て、奥さんルースは、一つの提案を持ちかけます。
「いつまでもこの部屋にはいられないわ。エレベーターつきの、暮らしやすい部屋に引っ越しましょうよ」
アレックスにしても「確かにそうかもしれない、彼女の言う通りだ」と思う反面「いや、しかし、この住み慣れた部屋から出て行く、というのはなぁ~」
なんとも、複雑な心境です。
確かに愛犬ドロシーだって、階段は辛そうだ。
散歩も、そう長く楽しめないかもしれない。
アレックスも、渋々、自宅を売りに出す決意をし、不動産のエージェントをやっている、姪っ子のリリーに自宅売却を依頼するのです。

やり手不動産エージェントのリリー(シンシア・ニクソン)は、仲介手数料をかせごうと虎視眈々です。
アレックス夫妻の部屋を、さらに魅力的に見せるために「こうしなさい、ああしなさい」と指示を出してきます。物件の内覧会「オープンハウス」の日が勝負なのです。
そんなおり、愛犬のドロシーに異変が。うまく歩けません。
熟年夫妻は、急いで医者に連れて行こうとします。
この時の医師とのやり取りが興味深いですね。
ドクターによると
「病名はヘルニアです。手術が必要ですね。費用としては**万ドルかかるでしょう」
ワオッ?!
アメリカでも日本でも、ペットの医療費は高額なんですね。
さらには、事もあろうにアパートメントの近所で、テロが発生!!
不動産屋のリリーは頭を抱えます。
「Ohマイガー!! 相場が下がっちゃう!!」
いったい内覧会はどうなるのか?
アレックス夫妻の決断は?
愛犬ドロシーはどうなるのでしょうか?
本作を見ていて面白いのは、大都会を舞台にした暮らしぶりであり、それはズバリ
「お金」「プライス」なんですね。
ペットの病気治療費用が数万ドル、さらにはアレックス夫妻のアパートメント、その資産価値なんと100万ドルオーバー。
日本円に換算して1億円を楽に超える物件です。
そんな物件に、今までどうやってローンを払っていたんだろう? などと僕なんかは思ってしまったのですが。
アレックス夫妻は、決して贅沢な暮らしをしているわけではないのです。また、望んでいるわけでもない。
ただ、アメリカで最も歴史の古い町の一つ、ブルックリン。
250万人が住む、人口密度は高いけれど、落ち着いた雰囲気のある街並み。
ここで暮らし続けたい。大都会で慎ましやかに暮らすこと。
そう思う老境に入った夫婦を演じるモーガン・フリーマンとダイアン・キートン。
役者として、年輪を感じる演技は「さすが!」の一言でした。

ユキト@アマミヤ