劇場公開日 2017年4月29日

  • 予告編を見る

「●作品なのか、メッセージなのか。想像力が試される。」トトとふたりの姉 うり坊033さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0●作品なのか、メッセージなのか。想像力が試される。

2017年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

東欧、ルーマニア。貧困のリアル。生まれた場所で人生が決まる厳しい現実。大人にまみれてヤク中になるアナ。施設に駆け込むアンドレア。14歳で親と離れるという決意。アナのその後。頭ではわかる。しかし、わかったつもりになるのは、おこがましい。

撮影手法や目線など、テクニカルな評価はその通りなのだが、それ以上に、この現実に打ちのめされる。圧倒的な現実に。たしかにトトはダンスに、アンドレアはカメラに、人生の希望を見出す。しかし、それはいつ切れてもおかしくない糸のような不確かな希望だ。百歩譲って、ふたりは蜘蛛の糸を登れるかもしれないが、現実にはその他大勢の救われない人たちがいる。
それを、公式サイトでヒップホップの第一人者にコメント求める愚の骨頂。そろそろ映画業界も、ちゃんと考えた方がいい。

ラストが切ない。いつか成長したトトがこれを見たら、彼はどう思うだろうかと想像すると、すこし胸が苦しくなった。
難しいところだ。ドキュメンタリー映画として僕らはこの現実を考える機会を得たけど、倫理的にはどうなんだろとか。だからこそ、この現実をきちんと理解しようとすること、まずは知る努力をすることが大切だと思う。ここまでではないが、日本でも貧困にあえぐ子供たちがいるのだから。

うり坊033