「アカデミー主演男優賞を!」リリーのすべて 映画イノッチさんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー主演男優賞を!
エディ・レッドメインが
「今だったらやらない。当時は最善を尽くしてあの映画を作ったけれども、間違いだったと思う」
と話した
本心なのか?
トランスジェンダーや世間の中傷等に配慮しての発言なのでは?
トランスジェンダーの主人公はトランスジェンダーの俳優が演じるべきだ?!
当時から話題になったこの批判は的外れでしかない
殺人犯の役は殺人犯にやらせる?
893映画は彼等に金を払って893本人に演じさせる?
画家の映画は画家しか演じられない?
『猿の惑星』の「猿」は人間が演じてるじゃん
笑止千万
別人が演じるからこそ「役者」の出番があり力量の見せどころなのだ
演技だと分かっていても、観客はそれらを本人だと思い込み、のめり込んでいくところが映画の良さだと思う
表向きはマイノリティに配慮した正義の味方!
でもそれは逆差別、いや、もっと言うと悪意に満ちた侮蔑に過ぎない
トランスジェンダーがもし演じていたら、その演技ではなく役者本人に対する心ない中傷が巻き起こるに違いない
そしてそれは演じた本人だけでなく、トランスジェンダー全てに向けられるていくことは容易に想像がつく
先の考えは、偽善者の言い訳であり、本物の差別主義者の隠れ蓑だと思う
映画と違って、モデルとなった実際の画家リリーは50歳で老衰による死亡との説もあるけれど、手術による直後の死亡だとも
映画的にはやはり後者の方が感動的ではある
ただ映画ではリーリーは50才には見えないので
2つの説の中間を採用したのかな
半世紀以上も前のなかなか手を出しにくい出来事に、魂を吹き込んだこの作品は称賛に値するし、リリーを演じたエディ・レッドメインが13kgも減量して臨んだ凄まじい役者魂も称賛に値する
今も昔も医者の多くは、金儲けのことしか頭になかったということ
患者のことなど二の次、三の次なのだということ
そのことが浮き彫りになった作品でもある
心と体の違和感を生み出し、人生を狂わせた悪の張本人、それは神様なのかも知れない
神様って意地悪なドSなのかな?
トランスジェンダーに対する当時のあからさまな嫌悪感に吐き気がすると同時に、そんな時代背景の中、苦しみつつも勇気を持って手術に臨んだ画家リリーに心からの拍手を送りたい