「他人事のようでも誰にでも当てはまるテーマだね!」リリーのすべて Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
他人事のようでも誰にでも当てはまるテーマだね!
この物語の舞台はデンマーク。時代は日本でいえば、昭和の初期頃の事。
今でこそ、LGBTに付いての理解もようやく一般的に認知されるようになってきた。
だが現在に於いても、全く偏見や差別が無いと言うわけではない性同一性障害者の暮らしに対する理解が、この時代ではどれ程困難極まりない現実であったのかは、想像に容易い。
そんな時代に生まれた育ったリリーが、葛藤を抱えながらも自己の魂の叫びに忠実に生きようと試みた勇者の物語であり、またリリーを支えて生涯彼を?否彼女を支え貫いた妻ゲルダの愛の軌跡の物語と言っても良い作品である。
もしも、今年のオスカー候補に5回目ノミネートのレオ様が選ばれていなかったら、絶対にエディに主演賞を受賞して欲しかったと映画を観ながら考えていた。何故ならこの時代には精神病患者として診断を下す医師も多数いたと言う性同一性障害者を演じるのだから、とても繊細でデリケートなキャラクターの内面を観客に理解出来るように芝居をするのは骨の折れる事であり、また根気のいる作業だったと思う。そう言う意味ではエディは、完全に自分の中に存在する2人の人挌の中で揺れ動く葛藤を見事に魅せてくれた。
男性画家で有るのは常にイメージで作り上げた虚構の自分と、裏に隠されたリリーこそ彼の、否彼女の本質だったわけだが、その葛藤が切なく、観客の胸に伝わって来る芝居だったと思う。
しかし、映画全体余り感情を露わにして取り乱すような演出は目立たずに、寧ろリリーとゲルダの表情の変化だけで、彼らの苦しみを見せてゆく。とてもデリケートな問題だからこそ、あくまでも繊細に丁寧に描き出す監督の演出の方法も良かったからこれだけ多くの賞に選ばれたのだろう。
それにしても、妻の描く絵画のモデル代役を務める事で、幼少の頃から一人内に秘め、隠し通して来たもう一人の秘密の自分自身に火が点き後戻り出来なくなる現実が有るとは、私には思い付きもしない考え方だった。
衣装の手触り肌さわりに魅了されて、過去の自己への回帰が始まると言うのは、人間の5感が如何に人々の根幹に深く根ざしたもので有るのかが理解出来た。その役を本当に巧く演じていたと思う。性同一障害が医学的には、多重人格とは何処がどう違うのか私には医学的な根拠や理屈はサッパリ理解不能であったけれども、そんな疑問が沸くと言う事だけでも、LGBTの方々の苦労や苦悩の一端を垣間見る事が出来大変有意義な時間でありました。
人はいつの時代も、他者に何と思われようとも、自己実現に向けて一人ひた向きに生き、そんな自己を貫く姿勢を観る事は、今後の自己に残された人生を如何に有意義な事柄で埋め尽くし、そして余生を充実させた時間として生きる事が可能なのか?を自己に問い掛ける良い起爆剤となる。そう言う意味に於いても本作が世に生まれた事は大変意義はある。
そして本作のラストは特に、この主人公達の想いを巧く表現していた見事な演出だった!
有りのままの自分を生きると言う事が如何に困難を伴う生き方であろうとも、只一度の人生を如何に生きる事が大切かを問う骨太な作品だった!
リリーの生き方とは、みんなが有る意味自己実現に挑戦する事が出来る素晴らしい生き様を教えてくれている作品だとも思う。
出来る事なら、敬遠せずにこの作品を多くの方が観てくれるならば、こんな喜ばしい事はない!
KYと他者に揶揄されようとも共に自己実現を益々日々楽しんで行えたならば、これ程幸せな事はあり得ないだろう!
それにしても、エディ激痩せ過ぎですよね!女性でもここまで痩せている人ってそう多くはいないと思う!大変な役作りにハマっているけれど、エディの次回作ももっと期待したいな!!