劇場公開日 2016年10月8日

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「日本の朝にワイドショーは欠かせない」グッドモーニングショー 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5日本の朝にワイドショーは欠かせない

2016年10月21日
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鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

朝のワイドショーのメインキャスターとして、活躍してきた中井貴一だったが、アシスタントの長澤まさみから番組で交際宣言をすると告白され、更には、プロデューサー・時任三郎からは番組の打ち切りを宣告され、早朝から意気消沈。。。

そんな絶望感で今朝もスタジオを仕切る最中、都内のカフェで元従業員の濱田岳が客を人質にライフル片手に籠城する事件が発生。

犯人は中井キャスターを此処に呼んでこいと要求したため、腹を括った当人はマイク1本で厳戒態勢の店に入り、命懸けのインタビューを試みる喜劇テイストのサスペンス。

『踊る大捜査線』の脚本家・君塚良一が、脚本だけでなく、本格的に監督業に乗り出した意欲作でもある。

とかく炎上の火種となりやすいワイドショーを題材に、かなり突飛な展開で進むがゆえに、賛否両論激しい作品だが、私は娯楽作品として純粋に面白かった。

台風リポートでの失態が原因で、現場取材が恐くて出来なくなったキャスターが、最大の災難を最大のチャンスだと切り替え、一大決心をし、事件現場へ飛び込む姿勢は、解決法も含め、確かに現実離れし過ぎているけど、朝のワイドショーの延長戦として、野次馬根性で追いながら、鑑賞する了見を勧めたい。

強引ながら散りばめられたキャラや小道具を巧みに伏線へ取り入れる盛り上げ方は、初期の『踊る大捜査線』を彷彿とさせ、興味深かった。

リポーター・中井、犯人・濱田、警察指揮官・松重豊etc.リアクションの名人達が叫び、現場が緊迫すればするほど、スタジオのスタッフやお茶の間で観ている視聴者etc. 傍観者との対峙が、皮肉な味わいを生み、笑ってしまう。

特に、思い込みが激しいアシスタント・長澤まさみの勘違い振りは、事件を引っ掻き回す天然エキスを全快に放出しており、堪らなくキュートである。

対する生真面目なスポーツ担当の志田未来の存在感も大きい。

日本人は家にテレビが有る以上、毎朝何気なくワイドショーを眺め、情報を消費する人種だと思う。

流される大量のネタを泳ぐも、巻かれるも、受け手・創り手の責任は曖昧であり、事件の当事者になる事で初めて、マスメディア社会・日本の恐ろしさ・愚かさを思い知る。

長年、浸透している《たかがワイドショー・されどワイドショー》の境地を銀幕で悟ったのは、大袈裟やけど、貴重な体験なのかもしれない。

ワイドショースタッフVS報道部との対立がスリリングだったので、テレビ業界の裏側をもっと露骨にネタにして欲しかったかなと、不満は残るけど、映画として大衆娯楽のバランスを保つには、アレぐらいのエグいワイドショーで丁度良い塩梅だったと云えよう。

日テレやと桝太一が、テレ朝やと羽鳥真一が、マイクを握って現場に突入していたのかな?と妄想しながら中井貴一の必死な交渉と重ねて追うと、今後、映画もワイドショーも見方が変わりそうで、何とも罪深い作品である。

では、最後に短歌を一首

『首の皮 現場に託す 朝の顔 握る観ドコロ マイクの重み』
by全竜

全竜(3代目)