劇場公開日 2015年12月23日

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「音楽の力が観客をKOする」クリード チャンプを継ぐ男 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5音楽の力が観客をKOする

2016年1月7日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

良い映画には良いテーマ曲が付きものだ。『ロッキー』もその例外ではない。

『ロッキー』のスピンオフとして作られた本作。チャンピオンを目指してトレーニングに励むアドニス・クリードの姿はかつてのロッキーと重なって見える。だが、聞こえてくるのはクリードの曲だ。これはロッキーではないと頭で理解していても、やはりビル・コンティのあの曲を期待してしまう。

ロッキーがあっさりとトレーナーを引き受けたり、タイトルマッチのチャンスが急に降ってきたり、とトントン拍子な展開に、これは"親の七光り"映画じゃないか、と苦言を呈したくなったが、実はこれが肝だった。伝説のチャンピオンの父・アポロの名声は時にアドニスを傷つけ、時に励ます。ロッキーとは境遇こそ異なれど、生きるべき姿を勝ち取ろうと奮闘する物語の中で次第にクリードの曲が馴染み出す。

ラストのタイトルマッチに興奮せずにいられない。セコンドに就くロッキーの言葉に過去作のハイライトが浮かんでは消える。アドニスの心にアポロの勇姿が過る。そんな中でいつしか忘れかけていたあのテーマが響き渡る。その瞬間、ロッキーの魂がアドニスに乗り移り、父・アポロの血を沸き立たせる!聞き慣れたはずのテーマ曲は私をKOさせ、リング上での死闘を力を込めて見守らせる。この一瞬は本作の最高のクライマックスと言って良い。

試合後にクリードの曲が流れた時、劇中にロッキーのテーマを求める気持ちは無くなっていた。『ロッキー』という名のチャンピオンベルトは確かに『クリード』へ受け継がれたのだ。

Ao-aO