「映画ファンには最も「遠い」ジャンル映画だが、その圧倒的なDopeに酔いしれろ」ストレイト・アウタ・コンプトン しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
映画ファンには最も「遠い」ジャンル映画だが、その圧倒的なDopeに酔いしれろ
「スターウォーズ」「クリード」を見納めだと言いながら、本作を来年に延ばさず、本年中に観たのは、実は最初の1週間は先行上映ということを知り、ホームグラウンドの南町田で公開するということを知ったからだ。(年間ベストはもうブログでUPしたので、来年対象)
もはやこいつを観ずに年を越せるか、MotherF**ker。
映画はジャンルものが際立てば際立つほど、客層に変化がある。マーベルものを見に行くと、ネルシャツ。北野やくざ映画を見に行くと、前の座席に足。アニメのほうはどうなんでしょう?ガルパンでも行ってみましょうか。
南町田の109シネマズグランベリーモール第4ホール。
チェーンを腰にジャラジャラと、FILAのパーカを着たお兄さんなど、まさしくジャンルな観客で席のほとんどを占めている。明らかに場違いなチェスターコートのオレはしずしずと席に沈む。
こういうの、楽しいねえ。こうでなきゃ!!
しかし、本編始まったら、やんややんやしてくれるのかと思ったら、なんと静かに鑑賞。ちょっと肩透かし。まあ、いいか。
「ストレイト・アウタ・コンプトン」
N.W.A、Dr.Dre、Ice Cubeなど知らない人、ラップが嫌いな人はもとより、2時間30分、という長丁場にしり込みする人いるだろう。
おそらくは、いわゆる「映画マニア」にとって、一番「遠い」映画だ。
だが、これだけは言っとく。
「超面白れえ」
いや、確かに2時間30分は長い。だが、こいつらの出会いと別れと再出発をきっちり飽きることなく、ロドニー・キングの事件も絡め、時代も追いつつ、ギャングスタ・ラップの始まりから、ギャングものの緊張感と、ライブのカッコ良さ、3人の主人公の顔の良さ(本当に3人の顔がイイ!特にDr.Dre)など、とにかく見どころが多く、あっという間の150分。
普段映画を観なさそうなFILA兄ちゃんが食い入るように観ている。
本作、例によって、Based on a true storyモノ。実在したグループで、製作陣に本人のDr.DreとIce Cubeがいるので、自分たちに甘い自伝かというと全くそんなことはなく、いい意味でも悪い意味でも「Dope」。金をよこせと金属バットをぶちかますキューブはマジで怖い。ドレーも濡れ濡れパーティ三昧だった過去をきちんと見せる。。
歩いているだけで、警官に呼び止められ、地べたに這いつくばされる。黒人とみれば、みんなギャングか?と怒りを詩にし、曲に乗せる。黒人警官も権力の犬と化し、ギャングは、黒人の少年を銃でマジで脅す。終盤のデス・ロウ・レコード脱退するドレーとシュグのやり取りもとっても怖い。
だが、こいつらも、ランチキパーティで女に〇〇〇させといて、そいつの男に銃を向ける、くそ野郎ども。「F**K The Police」っておいおい、お前ら、そりゃそうだろ、お互いさまだろ?みたいな気もするが、いや根は遥かに深い。
オレは彼らの文化、生き方に共感できるわけはなく、なんてすさまじいのだ、とただただ圧倒されるのみ。
もちろん、陽気な一面もちゃんと描いており、中盤袂を分けたキューブとN.W.Aの互いをラップでバトルする曲など笑ってしまうと同時に、ラップでディスるってことが、これほどCoolだと思い知らされる。
ライブシーンももちろん、すげえかっこいい。よく研究し、練習したんだろうなあ。
メンバーの一人の自業自得な結末なども決してなあなあな描き方でなく、こういう仲間がいた、ということをきちんと描こうとしているところが、本作の素晴らしいところ。
さっきも言ったように、とにかく、一言「Dope」に溢れている映画なのだ。おいおい、いきなり2016年のベスト1級の映画にぶち当たったようである。
危険で楽しい中毒性のある、また見たいという欲求、それも「Dope」。
追記
偏食な、めんどくさい映画マニアにこの映画を紹介するとすれば、そうだね、スコセッシの「グッドフェローズ」みたいな感じって「適当に」言えばいいよ。
目の色変えるから。