HiGH&LOW THE MOVIE : インタビュー
AKIRA&岩田剛典、拳と魂で語り合った2人が振り返る「HiGH&LOW THE MOVIE」
「コブラと向き合うシーンでね、テストを含めて何度も撮っていて、しかもカメラに映らない角度なんです。それでも岩ちゃんを見たら、全力で泣いてくれているんですよ」――AKIRAは嬉しそうに振り返る。「HiGH&LOW THE MOVIE」クライマックスのシーンのことだ。岩田剛典は「もう一度やれって言われても、二度とやれないですけどね(笑)」と照れくささを隠すように返す。拳で、魂で語り合った2人は口を揃えて言う。「このメンバーだからできたシーンだなって思います」。(取材・文・写真/黒豆直樹)
EXILEのリーダー・HIROの企画プロデュースの下、一大プロジェクトとして始動した「HiGH&LOW」。2シーズンにわたる連続ドラマ版で、“SWORD地区”の覇権をめぐる5つのチームなどの争いが描かれたが、今回の劇場版ではさらに激化していく。
AKIRAは、プロジェクトがはっきりとした形となる以前の初期段階で、HIROから構想を聞かされ、熱く語り合ってきたメンバーのひとりだ。
「以前から『こんなことやってみたい!』『こういうのが実現できたら面白い』なんて話で盛り上がるところから始まっていて、熱くなるとその場にスタッフさんを呼んだりして、“男祭り”な話し合いでした(笑)。それが徐々に形になって、驚きもあったし、ワクワクもしました。実際にドラマができて、映画が完成して…感慨深いものがあります」。
岩田も、AKIRA同様に「『会議をします』って感じじゃなく、食事や飲みの席でいろんな話をHIROさんから聞かされてきました」と明かす。いや、それはごく最近、ドラマや映画の製作中も変わらずに続けられてきたことだったという。
「急に『コブラって、この先どうなっていくと思う? 何がやりたい?』って聞かれたり(笑)。常に僕自身が現在進行形でコブラという役を成長させていくことを要求されたし、そのための意見を僕の方から発信することも求められるという、いままでにない作品への関わり方ができた特殊な現場でした。その意味で、夢を広げ、生き物のように作品自体も変化していくという点で、『HiGH&LOW』がやっていることは、まさにEXILEがこれまで、そしていまもやり続けていることそのものなんだと思います」。
5つのチームに加え、外部からの勢力などが入り乱れ、多くの者たちが集うが、一貫して掲げられてきたのが「全員主役」というコンセプト。AKIRAはその意味を「全ては、自分たち次第」と解釈し、並々ならぬ思いで役柄と向き合った。
「“全員主役”ってそういうこと。ひとりひとりの意識次第、その丁寧な積み重ねの有無で、作品が一瞬でダメにもなりうる。だからこそ、誰よりも琥珀という自分の役を理解しないといけなかったし、岩ちゃんの言うように、自分で成長させていかなくてはいけなかった。実際、琥珀の義眼や衣裳などのビジュアルに関しても、自分なりに考えてやらせもらいました」。
岩田が演じた、HIRO直々の命名によるコブラは5つのチームのひとつ“山王連合会”のリーダー。ドラマ版で、物語はしばしばコブラを中心にした山王連合会の視点で展開してきた。この未知なるプロジェクトにいかに視聴者を惹きつけるか。確実に重圧は存在した。
「“全員主役”ではあるけど、最初の段階でいかに感情移入してこの独特の世界観に入り、のめりこんでもらうか? これが山王連合会に委ねられていた部分はありましたので、勝手にプレッシャーを感じていたところはありましたね(苦笑)。ただ、やっていく中で自分なりに役や山王連合会を成長させていくことができて、それはすごく楽しかったです。最初、コブラは『最も冷酷な男』という設定だったんです。でも、演じる上で人情味がないと、共感しづらいというのが見えてきて、現場であえて感情を足していったりしました。ピアスや衣裳に関しても、私物を使用したり、頭でっかちになり過ぎず、現場で臨機応変に作り上げていった部分が大きいです」。
琥珀とコブラは、かつてSWORD地区を支配していた、チーム“ムゲン”のメンバー。琥珀は創設メンバーで、コブラは後輩にあたる。EXILEにおける、AKIRAと岩田の関係にも重なって見えるが、改めて普段の2人の関係について尋ねるとAKIRAは岩田を「“Mr.EXILE”」と評し、こんな言葉を続ける。
「一緒に踊って、飯食って、酒飲んで……。EXILE以前のダンスにおけるルーツや、スタイルを含め、通ってきた道が近いというか、共通点もいっぱいある。岩ちゃんは三代目J Soul Brothersとしての活動も多いけど、それでも一緒にいることは多いんですよ。世間的には“さわやかな王子様”というイメージがあるかもしれないけど(笑)、じゃあなぜ、この『HiGH&LOW』という男くさいプロジェクトのど真ん中に彼がいるのか? やっぱり、岩ちゃんの本質にそういう要素があるからだと思う。“王子キャラ”と言われようと、芯の部分では男くさくて、グループのため、仲間のために費やす熱量も半端じゃなく、熱いものが燃えたぎっている。世間で思われている以上に、EXILEの血が濃い男だなって思います」。
「光栄です」――岩田は嬉しそうに笑みを浮かべ、自身にとってのAKIRAという存在の大きさについてこう語る。
「僕にとってはダンサーとして、デビュー前から勝手に憧れてきた存在だし、EXILEにあって、お芝居の道を切り開いた先駆者。HIROさんがプロデューサーに徹しているいま、現場におけるリーダーであり、僕らはその背中を見ながら『付いていきます!』という思いでいます。僕自身、こういう形で共演させていただくことを目標としてやってきたので、今回、またひとつ夢を叶えさせてもらいました」。
そんな2人と、ムゲンのメンバーで琥珀を支える九十九役の青柳翔、コブラの幼なじみで山王連合会のメンバーであるヤマトを演じた鈴木伸之の2人を加えた4人による壮絶な戦いが、今回の映画版のクライマックス。並外れた身体能力の高さを誇る男たちが、このシーンに関しては、アクションの派手さや観客への見せ方といったテクニックを超えて、魂をむき出しにして、激しくぶつかり合う。4日間を要したこのシーンの撮影を、AKIRAは感慨深げに振り返る。
「気心の知れた仲間だからこそ、その環境に甘えるのではなく現場ではストイックにいようと思いましたし、良い意味でただひたすら作品のためにというスタンスで臨めた。撮影前は役に入るため、それぞれバラバラに散って気持ちを高めたりしていました(笑)。でも、言葉はなくとも意思の疎通はできていたし、この4人じゃなきゃ生まれない空気があった。その積み重ねで、あの画面からあふれるような力が生まれたんだなと。技術とかスキルではなく、一瞬一瞬の感情のぶつかり合いが出ていると思います」。
岩田も「栄養ドリンク何本飲んだか…」と苦笑しつつ、充実感を漂わせながら過酷な撮影を述懐する。
「2時間以上もある映画の中のクライマックスが4人に託されて、現場にもなんとも言えない緊張感があったし、これまでにない極限の状態でしんどかったけど、このメンバーだから最後までやりきれたんだなと心から思います。本当に感情を全てさらけ出して、いま思い出しても言葉に詰まりそうなくらいで。頭の中の血管の1~2本、切れたんじゃないかって(笑)」。
EXILE(=放浪者、彷徨)という名にふさわしい、さすらい続ける男たちの魂が、このクライマックスの果てにどこに向かうのか? その行き着く先を見届けてほしい。