「疑似家族」永い言い訳 fukui42さんの映画レビュー(感想・評価)
疑似家族
最近ヒット作がなく、国民栄誉賞受賞者と同じ本名(読み名)の作家・幸夫。
妻が友達とスキー旅行に行っている間に、不倫相手を家に招き入れている最中に妻が事故死。そんなイヤーな雰囲気で幕を開ける作品。
一緒に亡くなった妻の友達の夫や子供は嘆き悲しんでいるのに、幸夫は涙すら出ない。編集者に「妻の死について書くしかないんじゃないですか?」「もっと泣いていいんですよ」と言われる始末。
幸夫は作家ゆえにか、感情を表に出すことができないのかもしれない。
それを幸夫は「俺は妻を愛してなかったんだ」と思うところ。わかる気がするような。夫婦って所詮は他人じゃないのだろうか。
妻の友人の夫・子供が、妻・母が急にいなくなって困っているところに、偶然幸夫が子供の面倒を観るのは。疑似家族ってところかも。
幸夫は自分が一番大切で、子供を自分の意志で持たなかったのに。「自分より弱きものを守る」ことの重要さを、妻が亡くなってから気づくって、皮肉。自分自身にちょっと重なる。
冒頭で幸夫が妻に髪を切ってもらうシーン。20年ずっと切ってもらってたから、作品中ずっと髪が伸びたままなのが印象的。終盤妻が勤めていた美容室に足が向いたのが、幸夫の心が少し前を向いたのかな。
個人的には不器用なトラックドライバーの竹原ピストルさんがナイス。亡き妻の伝言メッセージが消せなくてさめざめしているところが、「もうちゃんとしなさいよ!]とおっかちゃん風に檄を飛ばしたくなりました。
終わり方が素敵でした。大切な人を失っても、明日は来る。前に進んでいくことが今自分にできることですね。
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