「オジサンには刺さるんですよ、こういうの。」永い言い訳 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
オジサンには刺さるんですよ、こういうの。
さすが是枝組の監督だけに、人間を見る観察眼がすごい。
この監督は女性でありながら、男目線までも身に着けている。
そしてまるで自分の裸をさらすような演技をみせたモックンもすごい。
舞台挨拶で監督が言うには、人はかわりに恥をかいてくれる人を求めているらしい。だから、モックンがみっともない役を演じれば、それに好意的になるのだとか。たしかにそうだ。お笑い芸人だってそうだ。なんだバカなことやってるよ、っていいながら笑えるのは、そのバカな芸は俺にはできないが、それをみんなの前でできるお前はすごい、って思っているわけだ。
そして、これからも恥の十字架を背負って丘を上って欲しい、と独特の言い回しでエールを送っていた。
今の自分に丸被りのようなストーリーは言わずもがな、配役の妙、練りに練られていながらごく自然なセリフの数々、モックンの感情に合わせた容貌の変遷、そしてフィルムならではの柔らかい画面や引きのショット(山道を走るバスとかあれだけで泣けた)、、、。
熟成させた作品であることが伝わってくるだけで、心地よく打ちのめされながら鑑賞していた。何度も何度も、ヒャックリのように泣きながら。
コメントする